【IBD回顧録】第4話 大腸内視鏡は準備が肝心。「腸をきれいにするお薬」との格闘。

【IBD回顧録】第4話 大腸内視鏡は準備が肝心。「腸をきれいにするお薬」との格闘。


今回は、初めて受けた大腸内視鏡検査の準備編。

これまでと文体が変わっていますが、書いているのは同じ人間なのでご安心ください。(「です・ます」調より、こっちの方が書きやすい!)


※前回の話はこちら
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【IBD回顧録】第3話 救急病院は地獄絵図。診断がつくまでの道のりは遠く険しい。


IBD回顧録(第4話)

母に連れられ一般内科へ

救急病院に行った2日後の月曜日、朝一で一般の内科を受診した。向かったのは、父が会社の健康診断などで利用している病院。オフィスビルの中にあり、途中の廊下やエレベーターでスーツ姿の人とたくさんすれ違った。僕が着ているのはゆったりしたトレーナーで、なんだか場違いなところに来てしまった気がした。

問診票の記入などは、すべて付き添いの母がやってくれた。僕は下痢と腹痛で疲弊し、ずっとぐったりしていた。

母が受付でこれまでの経緯を説明すると、やはり大腸の検査をすべきだと言われた。ただし、検査は1週間以上前に予約が必要。今日はとりあえず予約だけして帰るしかないとのことだった。

しかし、母は簡単には引き下がらない。僕がいかに悲惨な状況かを説明し、早く手を打ってくれないと困る、と必死に訴えた。普段は「かわいそうだから」という理由で勧められた商品を購入してしまうような母だが、こういうときの押しはめちゃくちゃ強い。

最終的に、折れたのは受付の看護師さんの方だった。

「ちょっと先生と相談してみますね」

結果、さすがにその日は無理だったが、翌日に大腸の内視鏡をしてもらえることになった。

当時は大腸内視鏡が初めてだったので、検査の説明には真剣に耳を傾けた。

通常なら、検査の3日ほど前から繊維質のものを避けるよう気をつけるのだが、そもそもほとんど食事を摂れていなかったので関係なし。前日に飲む下剤も、下痢がひどかったため免除となった。

とりあえず当日は朝から絶食で来院するように、とだけ注意され、その日は病院を後にした。

「腸をきれいにするお薬」の正体

翌日、どんな検査をされるのか、緊張しながら病院に向かった。

事前の案内では、検査前に「腸をきれいにするお薬」を飲むと聞いていた。僕は「腸をきれいにするお薬」と聞いて、錠剤や紙コップ1杯くらいの液体を想像していた。

しかし、現実は違った。

看護師さんが持ってきたのは、理科室でしか見たことがないような巨大容器に、波なみと注がれた液体だった。目の錯覚なのか、液体は薄くセピア色がかって見える。

幾度も大腸内視鏡を経験した今の僕は、それが「ニフレック」という名の腸管洗浄剤だと知っている。液量は全部で2リットルあり、最低でも1リットルは飲まないと検査をしてもらえない。

家で飲む場合は自分で袋に水を入れて作るのだが、このときは看護師さんが準備をしてくれたため、それが粉を水で溶かしたものだとわからず、最初から液体なのだと思っていた。

まずは一口、巨大容器から渡されたプラスチックコップに液体を移し、飲んでみる。ほんのり爽やかな風味はあるものの、決しておいしくはない味。飲んだ瞬間、これは体に吸収されないんだろうな、と感覚的にわかった。

「大変だけど、頑張りましょうね!」

洗浄剤の不味さは病院側も理解しているようで、看護師さんが黒飴(黒糖の飴)をくれた。当日は絶食だと厳しく注意していた割に、飴を舐めるのは大丈夫らしい。飴を吐き出すための小皿も用意され、洗浄剤を少し飲んでは飴を舐めて舌をごまかし、なんとか飲み進めていった。

隣ではサラリーマン風の男性が、黙々と洗浄剤を飲んでいた。大人ってすごいんだな、と感心した。(ただ、それから10年経った今も、僕はその境地には達していない。)

飲んで、出して、また飲んで

洗浄剤はある程度飲むと便意を催すので、トイレに行って用を足す。飲んでは出してを繰り返し、便がカスのない透明な液体になってようやく内視鏡検査を受けることができる。

腸を効率よくきれいにするため、トイレに行く前は毎回、看護師さんからレクチャーされた「もも上げ」をした。壁に両手をつき、左右の脚を交互に5回ずつ上げ下げする。トイレは一般の人も利用するため、周りから見られるのが恥ずかしかった。トイレは病院の外にあり、間の廊下を何度も行ったり来たりした。

元から下痢がひどく、これ以上出るものなんてないと思っていたが、便はなかなかきれいにならない。途中からはほぼ液体にはなったものの、どうしてもカスが残ってしまう。

何度もお尻を拭いているから、ちょっと紙が触れるだけでも痛い。洗浄剤を飲むのも、段々つらくなってくる。

気力も体力も尽きかけようとしていたとき、悲劇は起きた。

戦いの終わりは突然に

男子トイレの入り口まで、あと数歩のところだった。

漏らした。やってしまった。

冷たい液体が脚を伝う感覚に、それまでの痛みや疲れが一瞬で吹き飛んだ。どう対処すべきか、焦りで頭がいっぱいになった。

とりあえず個室に入り状況を確認。幸いなことに、便はほぼ尿と変わらないくらいきれいな液体で、固形物は見当たらない。量もそこまで多くなく、冬物のズボンの外側からは、ぱっと見で漏らしたとはわからなかった。

しかし、このまま隠し通せる自信はない。一応トイレットペーパーでできる限り拭いてはみたが、わずかににおいは残っている。黙っていて後からバレたらもっと悲惨だ。

悩んだ末、看護師さんと母に、失禁したことを正直に告白した。

一瞬びっくりした表情をされたが、どちらも対応は冷静だった。看護師さんは検査着を持ってきてくれ、母は自宅の父に連絡を入れて、着替えのパンツとズボンを持ってくるよう伝えた。

洗浄剤を飲むのはもう限界。まさかのお漏らしに、僕の心は完全に折れた。

ギブアップを宣言すると、看護師さんは先生に相談に行き、内視鏡検査の許可がおりた。本当はもう少し洗浄剤を飲む必要があったが、「頑張った(漏らした)から特別」ということらしい。

永遠に続くかと思われた検査準備は、予想外の犠牲を払って幕を閉じた。


※第4話はここまで。続きは次回!


さいごに

大腸の内視鏡検査は、検査そのものよりも、事前の準備が難関です。

最近は新しい洗浄剤が出てきて多少飲みやすくなったとはいえ、まだまだ改良の余地あり。

いつか下剤や洗浄剤を飲まなくていい検査法が開発されることに期待します。


※追記
次の話を書きました。
 ↓
【IBD回顧録】第5話 潰瘍性大腸炎を知った日。難病患者の自覚はまだない。


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