【感想】『医学のたまご』


題名:医学のたまご
著者:海堂尊


内容・あらすじ


ゲーム理論の研究者を父に持つ中学生・曾根崎薫は、父が作ったテストで日本一の成績を取ってしまい、医学部で研究を始めることになる。
薫は友人の力を借りながらも、医学の実験に慣れ始める。
すると、ある実験で取ったデータが医学的な大発見として注目されてしまう。
教授はすぐにこれを発表するが、のちに誤りだと判明する。
意地悪な教授はすべてを薫のせいにしようとするが、薫は勇気をもって立ち向かう。


感想・レビュー

こんな教授がいたら恐ろしい


何でもない中学生がちょっとしたことから注目を集めるということは現実でもよくあります。
ただ、大学に行って研究し、そこで成果を求められるというのは小説だけです。
実際には世間は子供をもてはやしながらも、どこかで馬鹿にしているということが多いのではないでしょうか。

スポーツや文学の場合は若くても結果を出せば文句はないのですが、
特に日本の学問の世界では、子供の出した成果は認めてもらえないように思います。
もし仮に才能があったとしても、研究成果は周りの大人のものになってしまいそうです。

ところが、この話に出てくる教授は逆に主人公の研究成果を大々的に発表し、その誤りの責任まで取らせようとします。
なんだかSTAP細胞事件を思い出しますね。
自分が大学に行ってゼミの教授がこんな人だったら恐ろしいです。


友人たちが才能に充ち溢れすぎ


大学で研究を始めた薫は、教授に英語で書かれた分厚い医学書を読めと言われます。
そこで、中学の友人2人が助けてくれるのですが、どちらも頭が良すぎです。

ひとりは将来医者になるために勉強している医学おたく。
もう一方は医学書も読めてしまうほど英語のできる女の子。

なぜ主人公ばかりが注目されてこの二人がサポートに回っているのか謎です。
薫が通っている中学校はよほどの進学校なのでしょうか。
才能あふれる友人に恵まれて、薫は幸せ者ですね。


自分の行動には責任を持とう


教授の思惑があったとはいえ、間違った論文を発表してしまった責任は薫にもあります。
薫は中学生なのでしょうがないところもありますが、現実には大学生や大学院生でも指導する教授に任せっきりで、自分のものだという意識がないまま論文を書いている人もいます。
論文に限らず、SNSやブログで文章を発表するときにも、自分で責任が取れるか考えることを忘れないようにしたいです。