【感想】『ピンクとグレー』


題名:ピンクとグレー
著者:加藤シゲアキ


あらすじ・内容


幼き日、大阪から横浜へと引っ越してきた主人公は、のちに親友となる「ごっち」と出会う。
2人は成長するにつれ、ともに芸能界を目指すようになるが、「ごっち」だけが売れていき、2人の間には溝が生まれていく。


感想・レビュー

アイドルとは思えない文章力


この本の著者である加藤シゲアキさんはアイドルグループ、NEWSのメンバーです。
なので、本を手に取ったときには、話題性があるから売れているだけで内容はたいしたことないのだろうと思っていました。
ですが、読んでみると文章中の比喩や物語の構成がうまく、その文章力に驚かされました。
アイドルとして活動しながらこんな作品が書けるなんて正直うらやましいです。

芸能界では、お笑い芸人のピース・又吉さんが芥川賞を受賞しています。
芸能人は表現することに対する感覚が鋭いみたいですね。
また、どちらもデビュー作の舞台として自分の活動している業界を扱っているという点で共通しています。
背伸びせず、自分のよく知る世界を題材にしているからこそいい作品が書けるのでしょうか。


リアルなのかフィクションなのか


この本の中で描かれている芸能界は、タレントが商品として形作られ、本人の人間性とはだんだんと離れた存在になってしまう、というドライなものでした。

アイドルとして活動している加藤シゲアキさんが書いた話なので、芸能界のリアルな姿が書かれているのだろうと思いましたが、巻末のあとがきやインタビューによるとどうやらそうでもないようです。

加藤さんいわく、この小説の中で描かれている芸能界は完全なフィクションで、実際にはもっと温かみのある場所であるとのこと。
まだ現役で活躍しているのに、自分のいる業界をこんなに意地悪に描くとは、かなりの勇者だと思います。


スタンド・バイ・ミーを知っていれば・・・


本作の中で、主人公たちは、「スタンド・バイ・ミー」という映画にちなんで、お互いのことを「ごっち」「りばちゃん」「サリー」と呼び合っています。
僕は「スタンド・バイ・ミー」を見たことがないので、このネタが全然わかりませんでした。
物語の根幹に絡んでいないことを祈ります。
「スタンド・バイ・ミー ドラえもん」なら知っているんですけどね。


本を読んでいると、しばしば有名な映画や音楽が登場しますが、たいていの場合わからず、自分の無知を実感します。
ある程度は流行に乗っていないと本も十分楽しめないのでしょうか。

音楽も映画もすぐには詳しくなれないので、自分の知らない世界に興味を持つきっかけになる、とポジティブにとらえることにします。