青崎有吾さんの『ノッキンオン・ロックドドア2』を読みました。
無限に話が作れそうですが、潔く終わってくれてよかったです。
感想・レビュー
前作と同様、どの短編もミステリーの基本が押さえられていて、謎解きの面白さを存分に楽しめた。それぞれの事件については文庫解説に言いたいことが全部書かれていたので、もう何も書くことがない。東川篤哉さんの解説は各事件の魅力を的確に伝えながらもネタバレはうまく回避されており、文章としても面白い。やっぱりプロの作家は違うなと実感した。僕に書けるのは頑張っても所詮「感想」止まりと開き直って先を続ける。最後の事件には素直に驚かされた。もし天川教授がすべてを見通した上であの態度だったら度量が大きいなと思うが、逆に最初からこういうトラブルに発展するのを予見していて放置していたのなら罪深い。ただ、小説では往々にして頭のいい探偵でも重要なことを見落とす。お見舞いとして病室で食べるのに適していない信玄餅を持ってきたのは、実は内心の動揺の表れなのかもしれない。
個人的には薬子ちゃんが探偵事務所に雇われた背景が気になっていたのだけれど、結局そこは深掘りされないまま終わってしまった。今回は薬子ちゃんの出番が少なめ。最後の事件ではほとんど部外者扱いでちょっと悲しかった。もし続編が出るのなら、薬子ちゃんと探偵たちの出会いをもっと詳しく描いてくれるとうれしい。
さいごに
『ノッキンオン・ロックドドア』は探偵が2人組という点を除けばスタンダードなミステリー。最近は設定が特殊な作品や「日常の謎」系のミステリーばかり読んでいたので、王道のフーダニットやハウダニットがとても新鮮に感じました。
すでに無数のミステリーが存在するにも関わらず、新たなトリックを思いつく推理作家には頭が下がります。