沖田×華さんの『透明なゆりかご』を読みました。
著者の沖田さんが、高校時代にしていた産婦人科医でのバイト経験をもとに描いた漫画です。
「生まれてくること」の尊さについて、改めて考えさせられました。
感想・レビュー
出産の暗い部分を描いた漫画
『透明なゆりかご』で描かれているのは、命が誕生する現場の暗い側面です。
一話目がいきなりアウス(人工妊娠中絶)の話でしたからね。なかなかの衝撃でした。
「生まれてこられなかった命」に対する主人公の感情が淡々と描かれていて、心に鋭く刺さります。
あっけなく失われていく命の多さを知り、気付いたら涙が出ていました。
現実を突きつけられるだけで、こんなにも心動かされるものなんですね。
漫画を読んで泣いた自分にもびっくりです。
著者の作風の幅広さに驚き
僕にとって沖田さんといえば、コミックエッセイの『毎日やらかしてます。』のイメージでした。
なので、『透明なゆりかご』もきっと笑えるほのぼのとした作品なんだろうと思っていました。表紙の絵もかわいいですしね。
そしたら、見事に裏切られました。まさかここまでシリアスな内容だとは……
『透明なゆりかご』では、沖田さんの発達障害に触れることもなく、笑いを誘うようなふざけた描写は一切ありませんでした。
沖田さんが、こんなに真面目で悲しくなる話を描くなんて驚きです。
正直、今まで甘く見ていました。
読者を笑わせることも、泣かせることもできるのは、すごい力だと思います。
産婦人科医にはかなわない
『透明なゆりかご』を読んで、心の強さでは産婦人科医には絶対かなわないと感じました。
失われていく命を毎日のように目の前にしたら、僕なら倒れてしまいそうです。
彼らのおかげで今自分たちが生きていると思うと、感謝せずにはいられません。
命の生まれる現場で働く人々を、心から応援したいと思います。
さいごに
『透明なゆりかご』は、どの話も全くハッピーエンドではありませんが、どこか人間の温かみを感じました。
これも淡々とした感情の描写と、飾りのないシンプルな絵のおかげでしょうか。
自分が生きていることのありがたさを再確認できる素晴らしい漫画でした。
ちなみに、『透明なゆりかご』の1巻はKindleでは無料です。
Kindle端末を持っていなくても、無料のKindleアプリをインストールすれば、パソコンやスマホでも読むことができます。
一つ一つの話はつながっていないので、1巻だけ読んでみるのもおすすめです。