【感想】『人魚の眠る家』は、命の扱いについて考えさせられる重い話でした。



東野圭吾さんの『人魚の眠る家』を読みました。

物語は、ほぼ脳死状態の娘をどうするか、という重いテーマ。

考えれば考えるほど、何が正しいのかわからなくなりますね。

とりあえず意思表示はしておこう


もしも子どもの意識がもう戻らないと知ったら、脳死判定を受けるか、受けないか。

なかなか難しい問題ですよね。

主人公たちは、娘が生きていると信じて治療を続けましたが、金銭面や労力を考えると、実際は相当きつそうです。

もし僕が子どもの立場だったら、脳死判定をして、臓器を他の患者さんに譲ってあげたいですね。

親に迷惑はかけたくないので。

まあ、脳が機能していなければ本当に痛みがないのか、正直不安ではありますけど……。


もちろん、できるだけ長く生かしてほしいという考えもわかります。

どちらにせよ、大事なのは、自分の意思を周りに伝えておくこと。

本人の考えがわかれば、残された家族も悩まずに済みますからね。

とりあえず、意思表示カードは書いておきましょう。


医療には何かとお金がかかる


主人公たちが悩んだのは、十分なお金があったからだという気もします。

延命治療には相当な費用が掛かるので、貧乏だったら、そもそも選択の余地がないでしょうから。

子どもの臓器移植には莫大な資金が必要だという話も出てきましたが、命を支えるには、異常にお金がかかりますね。

僕も難病の治療を受けていて、医療費の高さを日々実感しています。

命のあり方を決めるのも、結局お金かと思うと、ちょっと寂しいなあ……


結末は意外と現実的


いろいろハイテクな機械が登場してきたので、「これは奇跡的に復活するパターンか?」と思ったら、見事に裏切られました。

そんな安っぽい話じゃなかった……

娘の死を主人公が受け入れるラストは、一見普通のはずなのに、心に強く響くから不思議です。

そこまでに描かれる母親の苦悩があまりにも壮絶で、まっすぐ飾らない結末が、かえって印象深くなったのかもしれません。

奇抜な展開に逃げないところに、作者である東野さんの凄みを感じます。


あと、個人的には、最後にちょっとしたハッピーエンドがあるのが好きですね。

こういう終わり方をしてくれると救われます。


さいごに


『人魚の眠る家』は、女優の篠原涼子さん主演で映画化されますね。

その予告映像を見てしまったせいか、頭の中で主人公の顔が、完全に篠原さんになってしまいました。

いやー、ぴったり過ぎ!はまり役ですよ。

ただ、映画を見たいか?といわれると……そうでもないですね。

この作品は、大画面で見るよりも、本でじっくり読むのに向いていると思います。