住野よるさんの『また、同じ夢を見ていた』を読みました。
心が洗われるような優しい話ですね。
奈ノ花ちゃんの純粋さがまぶしいなあ……
※以下の感想はネタバレを含みます。
あらすじ・概要
強気でかしこい奈ノ花は、小学生の女の子。授業で発表することになった、「幸せとは何か?」について頭を悩ませる。
夜のお仕事をするアバズレさん、物語を書くのが好きな南さん、おいしいお菓子を作るおばあちゃん、そして、悪女のネコ。
風変わりな「友達」の力を借りて、奈ノ花は幸せの答えを見つける。
感想・レビュー
素敵な夢オチ
この小説は、端的に言ってしまうと、夢オチの作品です。といっても、落ちの意外性は重要ではなく、「きっと夢なんだろうな」と予想しつつ読み進める感じ。
まあ、タイトルが「また、同じ夢を見ていた」ですからね……
途中にもたくさんヒントがあったので、最後に「え、夢だったの!?」と驚く人はさすがにいないんじゃないでしょうか。
楽しかったのは、どこまでが現実で、どこからが夢なのかを考えること。
とりあえず、奈ノ花が実際に大人になったときの描写から、南さんとアバズレさんは、彼女が道を踏み外してしまった場合の未来の姿だとわかります。
いわゆる、パラレルワールドってやつですね。
もし両親が授業参観の日に仕事を優先していたら、飛行機事故で亡くなっていた、というのは衝撃的でした。
それに対して、ちょっと不思議なのが、おばあちゃんの立ち位置。
明らかに不幸だった南さんやアバズレさんと違って、おばあちゃんはとても幸せそうです。
果たして、おばあちゃんは年を取った奈ノ花そのものなのか、それとも、2人と同様、分岐した未来の姿なのか……?
僕としては、4人全員別々の人生を歩んでいて、それぞれ幸せを見つけたのではないかと思います。
以前読んだ『君の膵臓をたべたい』と同じく、この物語も、「人生は自分の意志で選択できる」というのが共通したテーマでした。
奈ノ花もきっと、夢で出会った3人の誰とも違う道を進むのでしょう。
人生とは?
物語の中では、「人生とは○○のようなものね」という例えがたくさん出てきました。プリンにオセロ、クジャクの求愛、お弁当など、なぞかけみたいなものから、そのままの意味のものまで。
自分だったら思いつかないようなうまい例えばかりで面白かったです。
個人的に好きだったのが「ダイエット」で、「むちむち(無知無知)じゃちゃんと楽しめない」という答えには笑いました。
せっかくなので、僕からも一つ。
人生は、ジャンケンみたいなものね。
その心は?
後出しはルール違反。
……奈ノ花ちゃんには敵わないですね。
「live me」のサイン
ちょこちょこあった謎解き要素の中で、僕が完全にお手上げだったのが、おばあちゃんの家の絵に書かれていた「live me」のサイン。途中、桐生くんのものらしいとわかり、どういう意味かいろいろ推理したのですが……
結局、主人公が解説してくれるまで、名前との関連性にたどり着けませんでした。
く、悔しい……
まあ、「桐生」の発音が英語の「kill you」に聞こえるから意味を逆にした、なんて手が込みすぎですよね。
もしノーヒントで答えを導き出した人がいたら、僕から拍手を送ります。
さいごに
『また、同じ夢を見ていた』は、大きな感動こそないものの、心がほんわかする暖かい作品でした。女の子のかわいい一人称で書かれているのが、またいいですね。
「しーあわーせはー」と歌う声が、本から聞こえてくる気がします。
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