住野よる『君の膵臓をたべたい』を読んだ感想。単純な青春小説かと思ったら、見事にしてやられた。

君の膵臓をたべたい_住野よる_住野よる『君の膵臓をたべたい』を読んだ感想。単純な青春小説かと思ったら、見事にしてやられた。


住野よるさんの『君の膵臓をたべたい』を読みました。

タイトルのもう一つの意味が素晴らしい!

話の展開も意外性があって、「なるほど、そうきたか」と感心しました。


※以下の感想はネタバレを含みます。

あらすじ・概要

地味で人間関係に興味のない主人公は、偶然手にした「共病文庫」で、クラスメイトの山内咲良が、膵臓の病気で余命あと1年だと知る。

家族以外で唯一秘密を知る人物となった彼は、明るい性格の咲良に連れ回され、2人は徐々に親交を深めていく。

素直な気持ちを伝えようとする主人公だったが、咲良の人生は無慈悲にも終わりを迎える。


感想・レビュー

まさかの展開にしてやられた

まず白状しておくと、僕は正直、この作品、そこまで期待していませんでした。

どうせよくある感動ものだと思って甘く見ていたんですよね。

ヒロインの寿命が尽きるまでの限られた時間で恋を楽しむ、みたいな。


実際、途中までは「やっぱりそうか」と思っていたのですが、咲良が死ぬ場面で、見事に裏切られました。

まさか、病気と全然別の理由で死んでしまうとは……


「病気で余命わずか」という設定だと、どうしても作者の都合っぽさがぬぐえませんが、残酷さがそれを上回ってくると、運命の無慈悲さを感じます。

結果的に、咲良の病気の秘密は、家族以外では、主人公と彼女の親友である恭子の間だけで共有されることになり、特別な関係性がより際立っていました。


悲しくて泣きそうになって、ちょっとひどすぎる気もしたけど、話の着地の仕方としては、きれい。

感動にプラスして、よくできたミステリーのような面白さがありました。

タイトルのもう一つの意味

タイトルに関しても、「君の膵臓を食べて病気を治してあげたい」という意味で、そこまで工夫がないと思っていました。

しかし、これにはちゃんと別の意味が用意されていて、それがまた秀逸。

「君の膵臓をたべたい」という言葉が、この作品のテーマをズバリ言い表しています。

いやー、よく考えたなあ……


それにしても、「膵臓を食べたい」というセリフに、あまりグロさを感じないのは不思議ですね。

やっぱり「膵臓」の字面や音の響きが宝石っぽいからかな?

ちなみに、僕は「膵臓」と聞くと、なぜかエメラルドグリーンの海を思い浮かべてしまいます。

もし共感してくれる人がいたら、すごくうれしい!

読者を楽しませる文章

全体的に印象的だったのが、文章の書き方。

先に主人公の感想が書かれていて、その後から対象となるセリフが述べられるのは、まるで手品のタネ明かしみたいで楽しかったです。

伏線と回収を細かく繰り返しながら進むので、飽きることなくストーリーを追えました。


また、主人公の気持ちが高ぶっているところでは、一文ごとに改行されていて、スピード感が出ています。

最初は感情の起伏に乏しかった主人公の内面の変化が目に見えてわかるのに加え、ページをめくる速さまでコントロールされてしまいました。

緩急自在の文章は、読んでいて心地よかったです。


あと、主人公と咲良が恋愛関係になりそうでならない、絶妙な距離感が最高!

最後の最後、主人公にとって、実はこれが初恋だったとわかったときには、恋愛に疎い僕でも、胸がきゅんとしました。


さいごに

『君の膵臓をたべたい』は、題名のインパクトに負けないくらい、中身の濃い小説でした。

咲良のように明るく、かつ主人公のように自分の価値観を大切にして生きていきたいです。

泣ける話だったけど、たくさん元気をもらいました。


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