Kindle Unlimitedで本間龍さんの『ブラックボランティア』を読みました。
東京オリンピックで採用が予定されている「無償ボランティア」を批判した本です。
運営側の闇が深すぎて、みんなで素直にオリンピックを楽しめるのか心配になりました。
感想・レビュー
誰も文句を言えない巨大イベント
東京オリンピックには無償ボランティア以外にもいろいろと問題がありますが、厄介なのは、メディアが表立ってそれを批判できないこと。テレビ局や新聞社はそれ自体が運営に関わっていたり、スポンサーになっていたりするので、大会にマイナスになる発言は控えざるを得ません。
オリンピックのCMを流しているということは、その番組は大会に協賛している企業のお金で作られているわけで、五輪のイメージを傷つける報道がしづらいのは当然ですよね。
この本では、こうしたスポンサーの仕組みや具体的な企業名、運営組織の構造などが解説されています。
僕は、今大会から一業種1社制が廃止されたというのを初めて知り、「だからこんなにスポンサーが多いのか」と納得しました。
今回の東京オリンピックは、スポンサー企業の数が増えすぎて、まるで日本社会全体が人質に取られているみたい。
スポーツの大会でも、ここまで規模が大きくなってしまうと恐ろしいですね。
給料を払うのが一番だけど……
さて、無償ボランティアの話ですが、僕は普通に給料を支払えばいいと思います。著者は、オリンピックは災害の復興と違ってきちんと利益が出るのだから、それをボランティアに還元すべきだ、と述べていて、全くの同感です。
ただ、実際にボランティアが有償になるかといえば、そう簡単にはいかないでしょう。
大会組織の権力が強いのはもちろん、最大の問題は、たとえ条件が厳しくてもオリンピックにかかわりたい人が、一定数存在すること。
どんなに文句が出たところで、結果的に人数が集まってしまえば、そのまま強行突破されるのは目に見えています。
なので大切なのは、ボランティアに行きたくない人が、自由に自分の意思表示をできる環境づくり。
待遇が改善される見込みがないのなら、ボランティアには負の側面があるという事実を、世間の共通認識にすることがせめてもの策です。
団体応募や企業、学校からの圧力で、無理やり強制参加させられる人が出ないことを祈ります。
さいごに
東京オリンピックのボランティアは、給料が出ないだけでなく労働条件も厳しいですが、それでも大会を盛り上げてやろうという日本人の心意気が、かえって問題を見えにくくしています。この「ブラックボランティア」は、著者のたとえがやや大げさには感じるものの、そうした精神論を抜きにして五輪の現状を考えるのに役立つ一冊でした。
ボランティアに興味がある人は、ぜひ目を通してみてください。
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