Rebecca Serleさんの『In Five Years』を読みました。
アメリカンなラブストーリーかと思ったら、だいぶ重たい話でした。
※以下の感想にはネタバレを含みます。
あらすじ・概要
企業法律家として働く主人公は、恋人から婚約のプロポーズを受けた夜、不思議な夢を見る。
そこは「5年後」のとあるアパートの一室。見ず知らずの男性と、流されるままベッドインしてしまう。
夢を忘れられないまま4年半が経過したころ、主人公はついに現実世界で男性と出会う。
なんと彼は、親友に新しくできた恋人だった……。
感想・レビュー
5年後の未来に待つもの
この物語のポイントとなるのが、夢で見た「5年後」の未来がどのような形で再現されるのか。
ずっと、どんな流れで主人公が友人の恋人と肉体関係を持つにいたるのかを考えながら読み進めることになりました。
結果、待っていたのは「love(愛)」ではなく「grief(悲しみ)」。
形式的には夢と同じベッドシーンなのに、そこにたどり着く過程によって、全く別の意味を持つ場面に変わってしまうという仕掛けでした。
うーん、なんとも重たい話ですね……。
先に「5年後」というゴールが示されていたのでなんとか最後まで読み切ることができましたが、友人が弱っていく描写が長くてつらかったです。
また、相手の男性(Aaron)は、愛を大切にしそうに見えて、恋人が死んだらあっさり別の女に移るのか、と途中までは不信感ばかりでしたが、ラストではぎりぎり許容できる一線で踏みとどまってくれて一安心。
決してハッピーエンドとは言えないものの、後味は悪くない終わり方でした。
哀れかな、David
なんだかんだで不憫だったのは、主人公の(元)恋人のDavid。
気配りのできる「いい人」でありながら、決定的な幸せはつかめない、残念なタイプの人物だと思います。
彼の「優しさ」は、きっと自分が傷つかないための防御壁。どこか本心を隠しているような印象を受けました。
今回の失恋をきっかけに殻を破れるといいですね。頑張れ、David!
英語の小説では珍しい現在形
この小説では、文体として、主人公視点の現在形が採用されていました。
僕が普段読む英語の小説は過去形を基本にした作品がほとんどだったので、新鮮な読み心地。
主語や動詞を省略した短い文を並べる技法も使われていて、臨場感のある文章になっていました。
英語は時制が厳格なので、現在形で長編の小説を書くのは骨の折れる作業だと推察します。
改めて考えると、語尾を変えるだけで現在形と過去形をころころ行ったり来たりできる日本語って、とても自由な言語ですね。
さいごに
「5年後のあなたは何をしていますか?」と尋ねられても、僕にはあまり明るい答えが浮かびません。
そもそも生きているのかどうかすら怪しい……。
このブログが5年先まで続いていたら奇跡ですが、未来に向けて少しでもマシな文章を残していけたらと思います。