【2024年7月】今月読んだ本の感想まとめ。農家も紙の本も減るのは寂しい。

【2024年7月】今月読んだ本の感想・レビューまとめ。農家も紙の本も減るのは寂しい。

僕の部屋にはクーラーがついておらず、日々酷暑の中で生活しています。

暑さに負けず、今月も本の感想を書いていきます。


※タイトルに「Kindle Unlimited」とつけているのは、AmazonのKindle Unlimitedを利用して読んだ本です。Kindle Unlimitedの対象作品は変更される可能性があるので、ダウンロードの際はご注意ください。

Kindle Unlimited公式サイトはこちら


読書記録(2024年7月)

ただしい人類滅亡計画


オモコロの恐山さんが書いた、「小説」というより「哲学書」みたいな本。

「人間はそもそも生まれてくるべきではない」という「反出生主義」について、いろいろな「○○主義」をもつ登場人物たちが議論しながら理解を深めていきます。


反出生主義は、自分個人に限定して適用するなら納得できますが、他人や人類へとスケールを拡大していくと、どうしても違和感が芽生えてきます。

頭では理屈がわかっても、感覚的にどこか受け入れられないモヤモヤは一体何なんでしょうね。

僕としては、苦痛なく一瞬で存在ごと消去してくれるのであれば、魔王には人類滅亡を申し入れるかも。(対象が自分だけなら迷いなく消していただきたい)

本の内容とは論点がずれますが、「死」はそれ自体よりそこにいたるまでの過程が耐えがたいと思っているので、そのステップを回避できる魔王の能力は魅力的に映ります。

アンソーシャル ディスタンス


BSテレ東の『あの本、読みました?』で紹介されていた一冊。

番組は文庫本の「解説」がテーマで、熱弁をふるっていた朝井リョウが一体どんな解説を書いているのか気になって手に取りました。

帯を見るばわかる通り、朝井さんは人として面白く、その面白さを言葉にするのもうま過ぎるので大好きです。


さて、金原ひとみさんの作品は初めてでしたが、パンチがすごい。

僕とはかけ離れた生活観(主に男女関係)で生きる主人公たちは、みな同一のキャラに見えるくらい遠くに感じましたが、実際にその世界で暮らす著者には解像度高く細かい違いもよく見えるのだと思います。

たった一冊しか読んでいないのに、きっと他の作品も同じような読後感なんだろうなと確信してしまうくらい、著者の思考や価値観を色濃く感じる短編集でした。

黒牢城


戦国時代を舞台にしたミステリー。

歴史には詳しくないのでどこまで史実に忠実なのかわかりませんが、武将と部下の関係性や当時の人々の価値観が物語の核となっていて、単に歴史の隙間にエンタメを埋め込んだ以上の面白さがありました。

これは直木賞を受賞するのも納得ですね。


ただ、演出のためか、現代ではお目にかからないような古風な語彙が多く使われていて、ちょっと疲れる……。

全然嫌な感じはしないけど、洋書を読んでる時くらい頻繁に辞書を使用した気がします。

歴史小説はしばらく遠慮しておこうかな(笑)

新世界より(上・中・下)




舞台は千年後の日本。人々が「呪力」を使って生活する神栖66町で生まれた女の子が主人公のお話です。

死人の量と死に方の描写がエグいですが、緻密に作りこまれた設定やストーリ展開はお見事。

上中下巻あわせて1000ページ以上あるにもかかわらず、途中で飽きることなく物語の世界に没頭できました。

特に感心させられたのは、数多く登場する架空の生き物たち。

みなそれっぽい生態や名前の由来が付されていて、まとめたらちょっとした図鑑が作れそうです。

ただ、本当に人が死に過ぎ!

人類は身の丈に合わない能力を持つべきではないなと強く思いました。

視力を失わない生き方(Kindle Unlimited)


目が悪くならないための自助努力の方法というより、眼科で行われている外科的な治療について詳しく書かれた本。

白内障や緑内障などについて、目のどこで何が起こっているのか、病院に行くとどのような対応になるのかがわかり、勉強になりました。

驚いたのは、かなり深刻な状態であっても、超上級の眼科外科医が適切な治療を行えば、裸眼で生活できるレベルまで視力が回復するということ。

まあ、その「超上級の眼科外科医」を探すのが難しいんですけどね(笑)

著者の自己評価の高さには読んでいて「うおっ……」となりますが、実際にすごい人なので認めざるをえないです。

知らないと恥をかく世界の大問題15


ニュース解説でおなじみの池上彰さんが、毎年刊行しているシリーズの第15弾。

いつもはAudibleで音声を聴いているのですが、オーディオブックになるまでは半年くらいラグがあるので、今年は普通に本を買って読みました。

池上さんは話がわかりやすいだけでなく、コメントに長年の経験に基づくキレがあって、勉強のためというよりエンタメとして楽しんでいます。


今年気になったのは、やはりアメリカの大統領選挙の話題です。

出版後に起きたトランプさんの銃撃事件やバイデンさんの撤退についてはカバーされていないものの、池上さんの解説は現場からの中継のような臨場感。

過去に何度も池上さんの本で読んだはずですが、改めてアメリカの選挙の仕組みを復習して、また新しい発見がありました。

池上さんは同じテーマでも同じ解説にならないように、毎回微妙に視点を変えているみたい。

中国やウクライナ、パレスチナの話も、テレビや新聞のニュースからは伝わってこない「そこが知りたかった!」という知識が得られました。

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬(Kindle Unlimited)


オードリー若林さんの、思考詰め込みまくりの旅行記。

キューバ、モンゴル、アイスランドへの旅の様子とともに、若林さんが感じたこと、考えたことが愚直に語られています。

ただ生きづらい世の中に文句を言うだけでなく、実際に旅をしたり、先生をつけて勉強したりまでして競争社会に対する違和感を乗り越えようとする姿勢は、もはや探究者。

僕の勝手なイメージよりだいぶアクティブな人だったので驚きました。


最後の「解説」で綴られているDJ松永さんの文章は、若林さんへの想いが溢れすぎていて、ちょっとたじたじ。

利害関係ではなく、自分の生き様をさらけ出すことで誰かを支え、支えらえれる関係性は素敵だなと思います。

農家はもっと減っていい(Kindle Unlimited)


今の農業の問題点と向かうべき方向性、それに即した自営農家の経営戦略を熱く語った一冊です。

僕は就農する気は全くないけど、著者の主張はロジカルで歯切れがよく、ワクワクしながら読みました。


興味深いのは、個々の農家を生き延びさせることが、必ずしも農業全体の発展にはプラスにならないということ。

これから確実に人口が減っていく日本では集約化は避けては通れませんが、農家の「撤退」を積極的に促すのは心情的になかなか難しいと思います。

果たして政府は抜本的な政策を打ち出せるのか?

なんだかんだグダグダと農業が衰退していくのは嫌だなあ……。

本のエンドロール(Kindle Unlimited)


本の印刷会社で働く人々を主役にしたお仕事小説。

中身の作品ができて装幀さえ決まってしまえばあとは機械的に印刷するだけ、と思ったら大間違いで、紙にインクを載せる作業に伴う不確実性と、そこに注がれる労力の多大さには、畏敬の念すら覚えました。

そして、そんな小説をKindle版で読んでいるという皮肉……。

作中で、「電子書籍端末は白黒表示が大半で細かい色調がわからないから表紙にこだわっても無駄だ」というような話がありましたが、実際その通りで表紙の写真はよく見えず、頑張ってデザインしている人には申し訳ない気持ちになりました。

しかしながら、現実的に考えて、紙の本が衰退していくのは確実。

昔は紙の本は絶対なくならないと思っていましたが、僕でさえKindle本に慣れてきてしまっているので、今の若い世代が大人になるころには、電子版だけで出版される作品が多数派になりそうな気がします。

寂しい……。


さいごに

毎年夏の暑さがレベルアップしていて、今年は生きて乗り越えられるのか、不安なほどにバテています。

さすがに夜中もずっと30℃超えは厳しいですね。

8月にブログが更新されなかったら……、察してください。


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