【短歌日記】下らなさ極めて人生上るだけ自虐は不遇な自分への愛

下らなさ極めて人生上るだけ
自虐は不遇な自分への愛


土屋賢二さんの『急がば転ぶ日々』を読んでいる。くだらない冗談ばかりの本だが、どのエッセイも期待を裏切らず、かといって予想を超えもせず、安定した面白さがある。一気に全部読み通すのではなく、気が向いたときにちょびちょび読み進めるのが、僕の楽しみ方だ。

土屋作品に初めて出会ったのは、人生で一番過酷な(今後記録が更新されないことを切に願う)入院中だった。暇つぶしにと母が買ってきてくれた本の中に、土屋さんの『紳士の言い逃れ』があった。筋肉が落ちすぎて寝返りすら打てないような状態だったが、休み休み本は読めた。土屋エッセイの軽薄さは、体力的にも精神的にもどん底の身にはちょうどよかった。

あれから7年。毎回土屋さんの新しいエッセイが出るたび、つらかった入院生活を思い出し、「なんだかんだでまだ生きてるな」と感慨にふける。土屋さんの長寿をお祈りしつつ、彼以上に長く生きて、最後のエッセイまで見届けられたらいいなと思う。