【患者力】食べたくても食べられないものを他人が目の前で食べているときの対処法。現実は変わらないから気持ちを変える。

僕はクローン病なので、食べたくても食べられないものがたくさんある。

お好み焼き、スパゲッティ、カレー、メンチカツ……。

かつて好物だったのものたちの姿を思い浮かべるたびに悲しい気持ちになる。


だったら食べ物のことなんて考えなければいいじゃないか、と思うけれど、実家暮らしだとそうもいかない。

親きょうだいは僕の前でも平気でアイスや揚げ物を食べてくる。

ただでさえネットやテレビから食べ物の情報が流れてきてうんざりするのに、実際に目の前でおいしそうに食べる姿を見せつけられては、スルーしようにもスルーできない。

いったん現実を受け入れた上で、気持ちに整理をつけるしかない。


というわけで今回は、自分が食べたくても食べられないものを他人が食べているときに僕が行っている対処法(ほぼ精神論)をまとめてみた。

こういう考え方もあるんだな、と参考にしていただけると嬉しい。


「来世」作戦

今回の人生では食べることに縁がなかったと諦めて、「来世食べればいいや」と食べたい衝動を来世に先送りにする作戦。

本当に来世があるのかとか、生まれ変わったとして人間なのかとか、細かいことは気にしなくていい。

たとえ不確かであったとしても、未来の延長線上にいるかもしれない自分に欲求を丸投げすることで、意外と心は軽くなる。


ポイントは、「治ったら食べよう」とか「調子がよくなったら食べよう」などとは考えないこと。

自分の体が食べられる状態まで回復しているどうかなんて、冷静に判断できない。どうしても基準が甘くなり、自分に言い訳をして、つい控えるべき食品に手が伸びてしまう。

僕は何度もそれで体調を悪化させてきたので、中途半端な期待を持たないように気をつけている。

無理なものは無理なんだと、きっぱり開き直る姿勢も大事。


「幸せジャイアン」作戦

「おまえのものはおれのもの」といえば、『ドラえもん』に出てくるジャイアンの名言。

それにならって「他人の幸せは自分の幸せ」と考えるのが「幸せジャイアン」作戦である。(ジャイアンと違って人の幸せを奪い取るわけではない)

人がおいしそうにごはんを食べていたら、それは自分にとっても幸せなこと。たとえ自分自身が食べられなくても、全体として幸せの総量が増えているのは間違いないはずだ。

目の前にいるのが家族や友人など自分にとって大切な人物であれば、この思考法で穏やかな気持ちを保てると思う。

むかつく奴が見せびらかしながら食事をしている場合は、別の方法に頼るしかない。


「すっぱいぶどう」作戦

『すっぱいぶどう』とは、イソップ童話のひとつで、高いところにあって届かないぶどうを、キツネが「どうせすっぱいぶどうに違いない」と考えて諦める話である。

この話と同じように、人が食べているものを「どうせ食べる価値はない」と考えるのが、「すっぱいぶどう」作戦だ。

クローン病の場合、食べられないのは刺激物や油脂類、乳製品など、一般的に健康に良くないと言われる食品も多い。(もちろん全部が悪いわけじゃないが)

なので、特にジャンクフードやインスタント食品の場合は、「食べたいけど食べない方が正解」「むしろ食べられなくなってよかった」と思うと諦めがつく。

実際のところ、無駄をそぎ落とした食生活を送っていると、肌荒れは減り、かぜもひきにくくなった。

おいしいけど体に悪そうなものが目の前にある場合は、食べない方が健康にはプラスなんだと考えて乗り切ろう。


「修行」作戦

「食べられないつらさ」を前向きにとらえるのが「修行」作戦。

漫画の主人公が厳しい修行に耐えて成長するのと同じように、自分も食べない修行中なのだと考えると、気持ちを強く保ちやすい。

実際、お寺のお坊さんは一定期間おかゆだけで過ごす修行を行っているらしい。


ただ、ランニングや筋トレを「する」のと違って、食事という行為を「しない」だけなので、いまいち修行感がない。

そこで、余裕があれば何かしら項目(間食をしない、揚げ物を食べないなど)を決めて記録をつけることをおすすめする。

守れた日は手帳やカレンダーの日付の横にチェックマークを入れるだけでもいい。

普通のダイエットとやっていることは変わらないかもしれないが、「○○日連続で間食をしなかった!」みたいな成果が目に見えてわかった方がテンションが上がる。

期限が無期限なのがハード過ぎて玉に瑕だけれど、終わりがない方が本来の意味での修行っぽい気はする。


さいごに

ここまでいろいろな「作戦」を書いてきたが、本当なら目の前でおいしそうに食事をされようとも、心が無風なのが理想なのだと思う。

しかし、普通には食べられない状態になってから10年以上経っても、いまだに心が折れそうになる瞬間がある。

クローン病以外にも、アレルギーや代謝異常など、食事制限が必要になるケースはたくさんある。

世の中にどれくらい「食べられない」人が存在するのかはわからないが、もしあなたがそうであるなら、とりあえず笑顔でいてほしい。


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