田中修治さんの『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』を読みました。
倒産しかけたメガネブランド「オンデーズ」の再生を描いた物語です。
実話をもとにした小説とは思えない、ドラマチックな展開でした。
あらすじ・概要
デザイン企画会社を経営する田中修治は、倒産寸前のメガネチェーン店「オンデーズ」の買収を決意。新社長として、元銀行マンの奥野とともに、企業再生に着手する。
繰り返される資金ショートの危機。
会社内部での裏切り。
東日本大震災による混乱。
いくつものピンチを乗り越えながら、オンデーズは成長を続けていく。
感想・レビュー
オンデーズに行きたくなる
僕は目が悪く、普段から眼鏡を使っていますが、オンデーズについては全く知りませんでした。小説では、企業理念や商品のコンセプトが、登場人物目線で熱く語られていて、思わず共感してしまう内容。
次にメガネを作るときには、一度オンデーズに足を運んでみたくなりました。
いやー、消費者として、メガネ屋さんの料金のわかりにくさは、以前から感じていたんですよね。
シンプルプライス、大賛成です。
社長が自分の会社の裏側を公開する本はたくさんありますが、ここまで完成度の高いものは珍しいです。
あえてフィクションにすることで、企業の魅力が物語を通じて違和感なく伝わってきました。
資金繰りは難しい
小説では、会社経営の内幕がリアルに描かれていて、勉強になる点がいくつもありました。とくに身に染みたのが、資金繰りの大変さ。
いざというときに頼りにならない銀行の姿勢には、読んでいてがっかりしました。
困っているときには突き放し、事業がうまく回りだすと、手のひらを返したように融資を持ち掛けてくるという……
まあ、億単位の借金がある状態でも、きちんと対処すれば会社が倒産せずに済む事実にも驚きましたけどね。
個人と企業の間の、お金に対する考え方の違いがよくわかりました。
災害時の活動には感心
実話に基づいた話ということで、東日本大震災の様子も書かれていました。被災地でオンデーズが行った、無料で眼鏡を作って配布する活動は素晴らしいですね。
あれだけの非常時であれば、視力を失ったときの不安は相当大きかったはず。
食料品メーカーが食べ物を配るのに比べるとハードルは高いですが、助かる人は大勢いたと思います。
お金がない状況でも、自ら動いて社会貢献しようという企業の姿勢には感心しました。
さいごに
『破天荒フェニックス』では、オンデーズの社員がみな生き生きしていて、苦労しつつも、それを楽しんでいるように見えました。企業の良さは、決算書だけではわからないということですね。
働く人にとって幸せな会社が、もっと増えてくれたらうれしいです。