ドストエフスキー『白夜/おかしな人間の夢』を読んだ感想。暗い現実には夢が必要?

白夜/おかしな人間の夢_ドストエフスキー_ドストエフスキー『白夜/おかしな人間の夢』を読んだ感想。暗い現実には夢が必要?


光文社古典新訳文庫の『白夜/おかしな人間の夢』を読みました。

ドストエフスキーの小説はいつか読みたいと思っていたので、まずは短編に挑戦。

この本には4つの作品(プラス1つのメモ)が収録されていましたが、今回は表題作2つの感想を書きます。

白夜

あらすじ

孤独で夢想家の青年は、ある晩少女、ナースチェンカと出会う。

互いの孤独を打ち明け、惹かれ合う2人。

しかし、ナースチェンカには、すでに約束を交わした男がいた。

青年は彼らの再会に協力するものの、男はなかなか現れない。

待つことに耐えかねたナースチェンカは、青年の愛を受け入れたかに思われたが……

感想

初めて読んだドストエフスキーの感想は……

意外と読みやすい!

空想だらけの文章に最初は戸惑いましたが、堅苦しくはなく、青年の恋の行方が気になって、一気に読み切ってしまいました。


そして何より、26歳で恋愛経験がなく孤独という主人公の設定が、僕の状況と近すぎる……

「そう、それ!」と思わずうなずくセリフがたくさんあって、普段意識していない心の暗部が映し出されているようでした。


ストーリーは、青年が幸せに満たされた状態から、再び孤独に突き落とされる展開で、なかなかに残酷。

途中から主人公を応援する気持ちだっただけにショックでした。

まさか一緒に住む約束までしたのに、男があらわれた瞬間に裏切られるとは……


とくに印象的だったのは、ナースチェンカのセリフが、最初は、

「ああ、彼があなたであってくれたなら!」

だったのに、最後の手紙では、

「ああ、あなたが彼であってくれたなら!」

になっている点。

ちょっとした表現の違いで、ここまで人の心を傷つけることができるのかとゾッとしました。

しかも、どちらも青年への愛を示した言葉で、無意識に「彼」と「あなた」が入れ替わっているというのが、また恐ろしい……

ナースチェンカの幸福を祈り、自身の悲しみを忘れようとする青年には、全面的に同情します。


おかしな人間の夢

あらすじ

自分を「おかしな人間」だと自覚する主人公は、自殺を決意していたが、偶然出会った少女をきっかけに思いとどまる。

その晩、眠りに落ちた彼は、夢の中で真理に気づく。

感想

『白夜』とは雰囲気が異なり、人生の価値観についての思想的な話でした。

夢の中でたどり着いた、無邪気で楽園のようなもう一つの「地球」が、悪意や欲望によってけがれていく様子は、現実社会に対するストレートな批判。

たしかに、無駄な「知恵」がない方が、人間は幸せだったのかもしれません。

かなり宗教チックな考えではあるものの、自分を世界の一部とみなす人生観には説得力がありました。


ハッとさせられたのは、人間は「人生を意識する方が、人生そのものより高尚であり、幸福の法則を知る方が、幸福よりも高尚である」と勘違いしがちだ、という指摘。

考えることばかりに夢中になって、自分の人生を見失わないようにしたいですね。


さいごに

ドストエフスキーの文章には独特な暗さがあり、読むのに精神的な体力が必要でした。

長編だと、これがずっと続くのか……

他の作品に手を出すべきか、迷い中です。


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