平野啓一郎さんの『本の読み方 スロー・リーディングの実践』を読みました。
僕は本を読むのが遅いので、「スロー・リーディング」という言葉に引かれ、Kindleで衝動買い。
さすがに芥川賞作家なだけあって、読みの深さは圧巻でした。
あらすじ・概要
作家の平野啓一郎さんが、本をじっくり楽しむ「スロー・リーディング」について解説した本です。前半は、スロー・リーディングのメリットや、具体的なやり方の説明。
後半部分では、『こころ』や『金閣寺』などの有名作品を用いて、実際にどのような読解ができるのかを示しています。
読書の技法を学べるだけでなく、平野さんの本に対する向き合い方を追体験できる一冊です。
感想・レビュー
国語の授業を思い出す
「スロー・リーディング」のやり方として紹介されていたテクニックは、正直どれも平凡で、目新しいものはありませんでした。メモを取ったり、印をつけたりと、ほかの本で読んだことがあるような読書術ばかりです。
しかしながら、面白かったのが、実践部分。
短い文章からここまで考察を深めることができるのかと感心しました。
知っている作品でも、平野さんの解説を読むと、印象がガラッと変わります。
よく考えてみると、読解の流れは、昔学校で受けた国語の授業とほぼ同じ。
テストだけでなく、普段の読書でも使えるんですね。
学生時代はピンときませんでしたが、大人になって改めて取り組んでみて腑に落ちました。
物語のどこに注目するか
紹介されていた本の読み方の中で、僕が参考になったのは、次の2つ。① 設定の意図を考える
② 登場人物の発する疑問に着目する
一つ目は、作者がなぜその設定を選んだのか、裏にある意図を考えるということです。
同じテーマであっても、当然別の書き方はあるわけで、細かい状況の描写から、本当に伝えたいことが見えてきます。
誰でもやっていそうですが、平野さんの『高瀬舟』(森鴎外)の解説を読んで、自分は今までたいして意識せず文章を追っていたのだと気づかされました。
二つ目は、読者が抱くであろう疑問は、作者が登場人物に代弁させるはずなので、それを見逃さないようにするということ。
これからは疑問文が出てきたら、「お、きたぞ」と注意して、答えがどこにあるのか探すようにしたいです。
作家の比喩の技術
書き手側のテクニックとして印象的だったのが、比喩の上手な使い方。例える現実とイメージが重層的に対応していると比喩が「キマる」というのは、なるほどなあ、と思いました。
たしかに、いくらわかりやすい例えを使ったとしても、実物との共通点が少ないと、説得力がありませんよね。
どれだけ親和性の高い比喩表現を探し出せるかが、文章の魅力を左右する決め手になるのではないでしょうか。
それにしても、例として挙げられていた、人生を「印刷」にたとえる比喩は秀逸で、ため息が出ますね。
この文章を見れば、芥川賞作家の肩書きがなくても、平野さんが相当な筆力の持ち主だとわかります。
ここで引用するのはやめにしておくので、気になる人はぜひ本を手に取ってみてください。
さいごに
僕は本を早く読めないことに内心焦りがあったので、ゆっくりのままでいいと書かれていて安心しました。ただ、時間をかけているからといって、理解度が増しているかは微妙。
いろいろな視点を取り入れて、ブログの感想もレベルアップを目指します!
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