山口周『武器になる哲学』を読んだ感想。「使える」哲学は面白い!

武器になる哲学_山口周_山口周『武器になる哲学』を読んだ感想。「使える」哲学は面白い!


山口周さんの『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』を読みました。

普通の入門書とは違う、割り切った編集の仕方は斬新。

現代社会と結び付けると、哲学はグッと楽しくなりますね。

あらすじ・概要

現代のビジネスパーソンに欠かせない哲学の知識を、著者独自の解釈を交えて解説した本。

社会を生きていくうえでいかに「使える」かという視点から、50のコンセプトが取り上げられています。

巻末には参考となる書籍が多数紹介されていて、これから哲学を学ぶ足掛かりとしても役立ちます。


感想・レビュー

哲学がつまらない理由

この本では、50のキーコンセプトを解説する前に、哲学を学ぶ意義や、一般の哲学入門書との違いが述べられています。

で、この前置きが結構長い……

僕は、最初読んだときは途中で飽きて、2か月ほど放置してしまいました。

今のところ無職なので、哲学が仕事でいかに役立つかを力説されても、あまり心に響かなかったんですよね。


しかし、再読してみると、その前置き部分にも興味深いことが書かれていました。

それが、哲学に挫折しがちな理由。

哲学は時代によって面白さにばらつきがあるとか、考えそのものは陳腐でも、そこに至るまでのプロセスが有用なコンセプトもあるとの指摘には納得しました。

多くの哲学入門書では、哲学者が時代順にズラッと並んでいて、思想の表面的な部分にしか触れていないため、つまらなく感じやすいというわけです。


よくよく考えると、「哲学」ってものすごく範囲が広いです。

すべてを一括りにして扱うのは、ちょっと無理がありますよね。

たとえば、スポーツであれば、水泳は得意だけど球技が苦手な人だっているし、野球が好きでもサッカーには興味がない人もいます。

哲学もそれと同じで、分野によって、自分が楽しめる部分と、そうでない部分があってもいいのではないでしょうか?

自由なら幸せとは限らない

無職の僕の心に刺さったのは、自由であることは本当に幸せなのか、という問い。

今の日本では、「働き方改革」と称して、会社にとらわれない自由な働き方が推奨されていますが、著者の山口さんは、その方向性に繰り返し疑問を投げかけていました。


実際、働かないでいると、時間の縛りがなくて自由なのですが、気楽そうに見えて、精神的にはきついんですよ。

もちろん、経済的な不安もありますが……

それを抜きにしても、制約がなくて自由過ぎると、底知れない息苦しさを感じます。

本書では、そんなつらさの理由が、哲学者の言葉を用いてずばり説明されていて、大いに共感できました。


自由について、まず取り上げられていたのが、エーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』。

フロムは、「自由には耐えがたい孤独と痛烈な責任」を伴うと述べていて、山口さんは、それを乗り越えるには、強靭な自我と教養が必要だと述べていました。

つまり、自分の中にしっかりした軸がないと、自由は謳歌できないということですね。

優柔不断でフラフラしている僕には、自由は荷が重すぎる……


もう一つ、示唆に富んでいたのが、エミール・デュルケームの「アノミー」という言葉。

山口さんはこれを「無連帯」と訳し、社会が自由になるほどアノミー化が進み、コミュニティの結びつきが希薄になると危惧しています。

解決策としては、会社の代わりに、家族の絆を深めたり、SNSで新たなつながりを構築したりすることが挙げられていました。

自由を「連帯の弱まり」ととらえる発想は、面白いですよね。


先ほどのフロムは、自由に耐える手段として、知識や精神力など、自分の内側に注目していたのに対して、こちらの場合は、他者とのつながりという、自分の外側に目を向けています。

結局のところ、自由によって幸せを得るには、自分を磨いて人間関係を大切にするという、人として当たり前のことがきちんとできていないとダメみたいです。

僕は今、人間力を試されている……!


さいごに

この本では、すべてのテーマが現代社会と関連付けて論じられていて、哲学を身近に感じられました。

どう使えるかを考えながら学ぶのが、哲学を楽しむコツですね。

さっそく、参考として載っていた本を、いくつか読んでみたいと思います。