笹井恵里子さんの『救急車が来なくなる日』を読みました。
僕は一度救急車のおかげで命拾いした経験があり、他人ごととは思えない内容。
不安を煽るようなタイトルですが、現実問題として、医療崩壊の危機は意外と間近に迫っているのかもしれません。
高齢化は止められない
みなさんは、高齢化による医療問題と聞いて、何を思い浮かべますか?
僕の場合、介護や終末医療のイメージばかりで、この本で取り上げられているような「救急」への影響には考えが及んでいませんでした。
たしかに、年を取るほど救急車に頼る機会は増えるでしょうし、処置が困難になりがちで、若い世代に比べて多くの医療資源が割かれてしまうのはうなずけます。
窮状を訴える医師たちの言葉からは、救急車の適正利用などは焼け石に水で、根本的に高齢者の受け入れ体制を考え直さないとまずいという印象を受けました。
でも、高齢化が急速に進むなんて、ずっと前からわかっていたこと。
現時点でほとんど有効な手を打てていないのに、団塊の世代が75歳以上になる2025年までに対策を間に合わせるのは、かなり無理がありますよね……。
新型コロナの流行によって海外の国々での医療体制の不備が浮き彫りになりましたが、日本もこの先、医療の質が落ちていくことは覚悟しなければならないと思います。
意外と知らない救急医療
僕は難病持ちなので割と病院とは縁が深いのですが、救急医療に関しては、この本で初めて知ったことがたくさんありました。
特に勉強になったのは、
・救急車での搬送先が決まる流れ
・「救急科」の存在
・海外の「ER」と日本のシステムの違い
・救急外来でのトリアージ
など。
数年前に救急車で運ばれたときは救急担当のスタッフの方々にお世話になりましたが、仕組みを知ることで、患者を受け入れる側の苦労がようやくわかった気がします。
それにしても、救急の看護士さんたちは、みんな鉄人だったなあ……。
一般の病棟とは違う、緊迫した空気の中で働く彼らの勇姿は、今も鮮明に記憶に焼き付いています。
著者が書いているように、僕ら患者にできる一番の手助けは、救急隊員が自分の医療情報にアクセスしやすくしておくこと。
実際、僕が意識を失ったときも、母が通院歴を説明してくれたおかげで、対応がスムーズに行われたそうです。
とりあえず持病がある人は、飲んでいる薬や通っている病院がすぐわかるように、「お薬手帳」などに情報をまとめて目につきやすい場所に置いておきましょう。
さいごに
この本では、現場のエピソードや生の声が切実さを伴って書かれていて、著者が丹念に取材を重ねてきたことが伝わってきました。
こういうノンフィクションを読むと、普段自分が社会の一側面しか見ていないのだと実感させられます。
昼夜問わず激務をこなす、医療従事者の方々に感謝!