更科功さんの『残酷な進化論 なぜ私たちは「不完全」なのか』を読みました。
タイトルは「残酷」になっていますが、印象としては「残念」な感じ。
他の生き物との比較によって、人間の体の仕組みの不完全さがよくわかりました。
鳥は飛べるだけじゃない
この本では、人間のさまざまな身体機能について、他の生物種との違いが述べられていました。
中でも興味深かったのは、鳥類との比較。
鳥といえば飛ぶ能力ばかりに目が行きがちですが、それ以外の面でも優れた部分がたくさんあって驚きました。
たとえば、人間の肺は空気の入り口と出口が同じなのに対し、鳥は別々。
吸う息と吐く息が混ざらず効率的にガス交換ができるため、山を越えるような高い場所でも問題なく呼吸が可能だそうです。
僕も鳥の肺が欲しい……。
また、人間が大量の水と一緒に捨てている「尿素」も、鳥は「尿酸」に変換することで、無駄な溶媒を使わず排出。
そういえば、鳥にふんを落とされた経験はあっても、おしっこをかけられた記憶はないですよね。
呼吸も排泄も、鳥の体のシステムは非常に合理的で、尊敬の念を覚えました。
人間は特殊じゃない
筆者が強調していたのは、人間が進化の最終形態ではないということ。
今地球上に生きている生物種は、魚も昆虫も鳥も、みな平等に現時点での進化の到達点だというわけです。
進化の系統図を書くときに人間を端に置くから誤解を招くと述べていて、なるほどなあ、と思いました。
これは、日本の世界地図で真ん中に日本列島が描かれているのに似ていますね。
ヨーロッパの地図だと、日本は「極東」なのに……。
自分を中心に物事を捉えてしまうのは、人間の悪い癖です。
これまで人類が自然淘汰を乗り越えられてきたのは、たまたま運よく環境に適応できたから。
進化の過程において、普遍的な優劣や強弱は存在しないということは、心に留めておきましょう!
さいごに
『残酷な進化論』は進化論はもちろん、純粋に生物学的な解説で「へー」と思う箇所がいくつもありました。
「管腔内消化」と「膜消化」の話とか、更科さんは目の付け所が面白いですね。
最近、本屋さんで彼が書いた『若い読者に贈る美しい生物学講義』が平積みされているのをよく見かけるので、購入しようか迷い中。
僕はまだ「若い読者」に含まれるのだろうか?