最近新しく学んだ英語表現の一つに、「It ain't over till the fat lady sings」というものがあります。
日本語に訳すと、「勝負が完全に決するまで結果はどうなるかわからない」という意味。オペラのフィナーレでふくよかな女性が歌うことが由来の慣用句だそうです。
こんなの本当に使われているのか?と思ったのですが、知ったその日に実際の使用例に遭遇。
アメリカのベストセラー、Ernest Clineの『Ready Player One』の中で、以下のような一文が出てきました。
“It’s not over until the fat lady is singing, right?”(248ページより)
これは、コンテストの最終目的地であるゲートを敵に占拠され、状況が絶望的になったときのShotoのセリフです。
僕なりに訳すと、「勝負は決着がつくまでわからない、でしょ?」といった感じ。悲しくても最後まで諦めない強い気持ちが溢れています。
Shotoは日本に住む引きこもりだけれど、両親がアメリカ出身で、英語がペラペラという設定。
おじぎをしたり、相手を「さん」付けで呼んだりと、随所で日本的な習慣を見せてくれるのに、ネイティブっぽい英語もサラッと使いこなしていてかっこいいですね。
不用意に使うと危ないかも
近ごろは性別蔑視に対する風当たりが強いので、「fat lady」という言い方はあまり印象がよくないかもしれません。
個人的には、男女を区別する発言を一様に批判するのは短絡的で、かえって多様性に不寛容な気もしますが、受け取り方は人ぞれぞれ。
とくに母国語でない言語の場合は、ニュアンスが正確に把握しきれていないので、「アリ」か「ナシ」か迷う表現は避けるのが無難だと思います。
まあ、「It ain't over till the fat lady sings」は慣用的な言い回しで、問題にはならないでしょうけどね。
ちなみに、『Ready Player One』では、女性の体形を表す形容詞として「Rubenesque」という単語が使われていました。
Rubenesqueの意味は、「(ルーベンスの絵に出てくる女性のように)ふくよかな」。
実際にルーベンスの描いた女性の絵を見てみると、「なるほどそういうことか」と納得しました。
たしかに、fatでもchubbyでもなくて、Rubenesqueとしか言いようがない……。
こんなに洒落た単語があるなんて、やっぱり英語は奥が深い!
さいごに
吹き替え版の映画の『レディ・プレイヤー1』は、最初タイトルを聞いたとき、「レディ」を「lady」だと勘違いしました。
英語版の本の表紙を見れば、「ready」なのは一目瞭然なんですが……。
せめて自分が発音するときは、「l」と「r」の違いがはっきり伝わるようにしたいです。