Kindle UnlimitedでNHK出版新書の『暴走するネット広告 1兆8000億円市場の落とし穴』読みました。
ネットの世界で横行する広告不正の闇に、NHKの取材班が切り込んだドキュメンタリーです。
僕は自分のブログで広告を貼っているので、事情にはそれなりに精通しているつもりでしたが、不正の実態は想像以上に深刻でした。
罪深き漫画村
メインで取り上げられていたのが、海賊版マンガ閲覧サイトの『漫画村』。
サイトに広告を載せていた広告主、広告代理店、被害を受けた出版社や著者の話から、事件の内幕が明かされていました。
漫画村は、運営元をたどれないようにする対策や不正な広告掲載の仕方など手が込んでいて、ただの「著作権侵害」にはとどまらない悪質さ。
よくテレビで「海外のサーバーを経由して……」のようなセリフを耳にしますが、具体的にはこんな感じなのかと、妙に納得してしまいました。
ネット犯罪を迅速に取り締まるためには、アクセス制限や国家間での情報開示など、議論の足りていない課題がたくさん残っています。
とくにネット上での著作物の保護は、きちんと法律を整備しないと、また漫画村のような事態を招いてしまいそうです。
著作権を適切に守るうえで、個人的に気になるのが、二次創作がどこまで許容されるのか。
近ごろの「表現の自由」は、ちょっと自由過ぎ。
悪意無く一線を超える人が出てしまわないように、どこまで許されるのかはしっかり明文化すべきでしょう。
アドフラウドと自動広告
「アドフラウド」という言葉は初めて知って、手口の巧妙さには衝撃を受けました。
見えない枠の中に別サイトを読み込ませる手法や「飛ばし裏広告」といった不正が、広告主の気づかないところで平然と行われれている事実に唖然。
もはやインプレッション数を稼ぐゲームのようになっていて、自動広告の複雑な仕組みが犯罪を助長しているようにも思えます。
ちなみに、当ブログは「Googleアドセンス」というGoogleが運営する自動広告の審査に通っていますが、この記事を書いている時点では完全に利用を中止しています。
2年くらい苦労して、やっと審査に合格したんですけどね……。
いざ広告を設置してみたら不快な広告(サスペンス漫画とかアダルトゲームとか)ばかり表示されて、耐えられなくなってしまいました。
自動広告では、企業側も広告を出すサイトを選べないし、サイト運営者も広告を選べません。
大まかな条件は指定できるものの、どのサイトにどの広告が表示されるかは基本的にプログラム任せ。ほとんどブラックボックスです。
自動広告は便利だけど、広告主とメディア運営者が健全な関係を築くためには、双方が相手を吟味する過程は必要不可欠だと感じます。
NHKの取材力はさすが
ネット不正に加担した人々に迫るNHK取材班の執拗さはさながら警察のようで、そこまでやって大丈夫か、と心配になるレベル。
ウクライナにある会社で漫画村のデータの入ったサーバーを撮影する際の交渉は、粘り方がしつこ過ぎて笑ってしまいました。
ジャーナリスト精神というか、国営メディアとしての矜持が伝わってきますね。
最終的に、絶対に口を割らなさそうな取材対象から話を聞けたり、貴重な写真を入手したりと、ちゃんと成果に結びついているのがすごいです。
NHK出版新書は、一般の著者が書いているものも含め、有意義な内容の本が多く、全体的に情報の密度が濃い印象があります。
僕はNHKの番組はあまり見ませんが、お金が本作りにも役立てられているのなら、快く受信料を払えます。
さいごに
ネット上ではまだまだ監視の目が行き届いておらず、ズルをしようと思えば割と簡単に実行できてしまうのが現状です。
試されているのは、一人一人のモラル。
お金に目がくらんで不正に手を染めないように、心を強く持ちましょう!