Delia Owensさんの『Where the Crawdads Sing』を読みました。
2021年の本屋大賞の翻訳部門で第1位になった『ザリガニの鳴くところ』の原作です。
本当は誰かと感想を語り合いたいのですが、友達もいないし家族に読んでもらうのも気が引けるので、ブログにひっそり綴っておきます。
孤独に光る命の輝き
『Where the Crawdads Sing』の舞台は、ノースカロライナ州の沿岸部にある湿地帯。
著者が動物学者ということもあって、自然に住まう生き物の描写には確かな体温が感じられ、木々のざわめきや鳥たちの息遣いまで聞こえてくるようでした。
とりわけ生命エネルギーに満ち溢れていたのが、主人公のKya。
命のひしめき合う湿地帯の中で、Kyaの生の輝きは、眩しい光を放っていました。
この物語の結末は、孤独によって増幅された、彼女の生きることに対する本能が引き寄せたものだと思います。
社会になじめない「かわいそうな少女」が、生物としては他の誰よりたくましかったというのは皮肉です。
見守るような気持ちで読んでいたのに、いつの間にか成長したKyaに置いてきぼりを食らいました。
英語の訛りを推理する
小説の登場人物たちは、必ずしも教育レベルの高い人ばかりではなく、英語にはかなりのなまりがありました。
とくにJumpin’の話す英語はなまりが激しくて、意味を読み解くのに一苦労。語形の変化を推理するのは楽しいけど、ちょっとセリフが多すぎますね(笑)
ものすごく謎なのが、「something」が「sump'n」になること。いったいどこから「p」がやってきたのか……?
英語の訛りは他にも気になる点がいろいろあるので、現在絶賛勉強中です。
(something → sump'n の変化に関しては、明確な理由が分かり次第追記予定)
ちなみに、この小説で使われている英語は完全にアメリカ英語なので、単語の意味を調べるときは米語版の英英辞典を用いるとスムーズです。
Kindleに最初から入っている『The New Oxford American Dictionary』は発音記号が独特ですが、今回使いまくったので慣れました。
動物学者の描く法廷
自然の描写も美しかったけれど、個人的に一番引き込まれたのは、Kyaの裁判の場面です。
同じ証言なのに、被告にとっての有利、不利が解釈ひとつで逆転していくのが爽快でした。
序盤から、捜査が進む様子が少しずつ差し挟まれているのが憎いところ。
それまで犯人を追う側の目線で事件の経緯を読まされていただけに、裁判で弁護士が提示する別角度の捉え方に意表を突かれました。
法廷で繰り広げられる舌戦は、堺雅人さんが主人公の弁護士を演じた『リーガル・ハイ』を彷彿とさせます。
検察側と弁護側の双方が陪審員の情に訴えかけるシーンは、まるでドラマみたいだなあ、と思いました。(これも小説なんですが……)
さいごに
『Where the Crawdads Sing』は、視点の切り替えや時間の進め方の緩急が絶妙で、最後まで見事に引っ張られました。
真相の明かし方、隠し方も秀逸。
今まで英語を学んできた甲斐があったと思える一冊でした。