Merriam WebsterのVocabulary Builderを読んでいたら、「mnemonic device」という言葉が出てきました。
以下の文章を見て、何を表しているかピンと来るでしょうか?
・Every Good Boy Does Fine
・Thirty days hath September
・King Henry Died Drinking Chocolate Mike
・King Philip Could Only Find Green Socks
これは難しい用語を覚えるための英語流の暗記方法。日本でいうところの「語呂合わせ」に近いもので、文章自体には深い意味はありません。
たとえば、元素の周期表は「すいへーりーべーぼくのふね……」と覚えるのが鉄板ですが、やってることはそれと同じですね。
Vocabulary Builderでは、有名なmnemonic deviceが軽く紹介されているだけで、それぞれが具体的に何を覚えるためのフレーズなのかは説明されずじまい。
非常に気になったので、今回は上記の4つについて自分で調べてみました。
Every Good Boy Does Fineは音階
Every Good Boy Does Fineは、楽譜の音階を覚えるためのmnemonic deviceです。各単語の頭文字は、ト音記号の五線譜に音符を書いたとき、線の上に乗る音を下から順に表しています。
……といっても、音楽になじみのない人には意味不明かもしれませんね。
まず、日本で一般的な「ドレミファソラシド」はイタリア語で、英語ではアルファベットの「CDEFGABC」が対応します。(日本語だと「ハニホヘトイロハ」)
そして、「ト音記号」は、五線譜の下から2番目(第2線)の音を「ト」、つまり英語の「G」の音(イタリア語だと「ソ」)にする、という記号。
そのため、ト音記号のついた楽譜では、五線譜の上に乗る音階は、一番下の第1線から順に「EGBDF」となるのです。
一応、僕は過去に少しだけピアノをかじった経験があるので、何とか理解できました。(3か月くらいで挫折したけど……)
ちなみに、ト音記号は英語だと「G clef」または「treble clef」。
他に「へ音記号(F clef, bass clef)」というのもあって、こちらは下から4番目(第4線)が「ファ(英語だとF)」の音になります。
へ音記号の場合には、五線譜上の音は「GBDFA」となり、次のようなmnemonic deviceがよく使われるみたいです。
Good Boys Do Fine Always
失敗を許されない過酷な環境で音楽に励む少年たちをイメージしてしまうのは僕だけかな?
Thirty days hath Septemberは月の長さ
mnemonic deviceは、気の利いた言葉遊びに限らず、単純に覚えたいことを並べてリズムを付けただけのパターンも含まれます。たとえば、「ABCの歌」はアルファベットを覚えるための立派なmnemonic deviceです。
Thirty days hath Septemberもそんな「覚え歌」タイプのmnemonic device。
有名なMother Gooseの一節で、それぞれの月が何日まであるのかを歌にしたものです。
全文は以下の通り。そのまんまな歌詞ですね。
Thirty days hath September,April, June and November.All the rest have thirty-one,Excepting February alone,And that has twenty-eight days clearAnd twenty-nine in each leap year.
https://poets.org/poem/leap-year-poemより
日本だと、31日まである月(1, 3, 5, 7, 8, 10, 12月)を「大の月」、それ以外の月(2, 4, 6, 9, 11月)を「小の月」と呼びます。
小の月を覚える「にしむくさむらい(西向く士)」という言葉は、皆さんご存知でしょうか?
「に(2)・し(4)・む(6)・く(9)」の後、11月は漢字にして縦書きにすると「士」という字になるのです。
いやー、うまい!(英語は全く関係ありません)
ちなみに、マザー・グース(Mother Goose)は、イギリスで古くから伝承されてきた童謡の総称です。
Mother Gooseという題名の歌があるわけではないので、ご注意ください。
King Henry Died Drinking Chocolate Mikeは単位の接頭語
長い距離について話すとき、「1000m」のことを「k(キロ)」という接頭語を用いて「km」と表現します。この「k」のように、100倍や0.1倍など「10n」倍を表す接頭語を暗記するためのmnemonic deviceがKing Henry Died Drinking Chocolate Mikeです。
単語の頭文字の「KHDDCM」はそれぞれ、k(キロ)、h(ヘクト)、d(デカ)、d(デシ)、c(センチ)、m(ミリ)に対応しています。
直訳すると「ヘンリー王はチョコレートミルクを飲んで死んだ」という意味のなんとも不謹慎な英文ですが、頭に残りやすいのは確かですね。
k(キロ):1000 = 103
「h(ヘクト)」は気圧の単位の「hPa(ヘクトパスカル)」の一部としてよく目にします。
「d(デシ)」は小学校の理科で習った「dL(デシリットル)」以来、使う機会がありません。
「d(デカ)」にいたっては、一体いつどんな場面で使用すべきなのか……。
個人的には、せっかくmnemonic deviceを作るなら、g(ギガ)やt(テラ)などもっと大きい数字の接頭語か、逆にp(ピコ)やf(フェムト)など小さいところを攻めるべきなんじゃないかと思います。
まあ、1桁刻みで接頭語が用意されているのはm(ミリ)からk(キロ)の間だけなので、その範囲に絞った方がおさまりがいいのかもしれませんね。
King Philip Could Only Find Green Socksは生物の分類
僕が昨日の夜ごはんで食べた鯖は、スズキ目サバ科の魚です。King Philip Could Only Find Green Socksは、この「目」や「科」などといった、生物の分類を表す用語を覚えるためのmnemonic deviceです。
頭文字の「KPCOFGS」は、分類の階層が大きい方から順に、界(Kingdom)・門(Phylum)・綱(Class)・目(Order)・科(Family)・属(Genus)・種(Species)に対応しています。
門(Phylum)→ Philip
目(Order)→ Only
科(Family)→ Find
属(Genus)→ Green
種(Species)→ Socks
僕たち「ヒト」は、動物界・脊索動物門・哺乳綱・霊長目・ヒト科・ヒト属・ヒト、と分類されます。
各分類の呼び名は、時代による変化や和訳の仕方によって、いろいろなバリエーションがあるようです。
亜門とか亜種とか、ややこしい……。
僕は専門家ではないので、とりあえず学名の「ホモ・サピエンス(Homo sapiens)」だけ覚えておきます。
さいごに
今回取り上げたmnemonic deviceはどれも耳慣れないものばかりでしたが、覚える工夫には人間的な温かみを感じました。人によって頭の中に入れておくべき事柄は違えど、「覚えたい!」という気持ちは万国共通。
日本でも海外でも、mnemonic deviceが滅びることはなさそうです。
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