なんだかんだいって、今年も無事に「読書の秋」らしい気候になりました。
暑すぎず寒すぎず、読書はもちろん何をするにもちょうどいい季節ですね。
鈴虫の音を聞きながら、今月も読んだ本の感想を書いていきます。
※補足
読書記録(2021年10月)
ひとりぼっちを笑うな(Kindle Unlimited)
テレビだと「おどけたおじさん」にしか見えない蛭子さんですが、自分の信念には強いこだわりを持っていることがわかりました。
「他人は他人、仕事は仕事」ときっぱり割り切るのは、口で言うのは簡単でも、蛭子さんほど行動が伴っている人はそういないんじゃないでしょうか。
人と自分、それぞれの価値観を尊重する姿勢はぜひ見習いたいところです。
関連記事:人間関係にメリハリをつけて生きる。蛭子能収『ひとりぼっちを笑うな』を読んだ感想。
前の奥さんが亡くなったときの話は、イメージと違い過ぎて驚き。
さすがの「ひとりぼっち」でも、心の底から愛せる、拠り所となるような存在はどうしても必要みたいですね。
僕は友達がいない分、親きょうだいとの縁は大切にしていきたいと思います。
一瞬の風になれ(Kindle Unlimited)
高校の陸上短距離選手が主人公の本屋大賞(2007年)受賞作品。
第一部から第三部までの3部構成で、僕はKindle Unlimitedで読み放題になっていた合本版を読みました。
3冊分でボリュームが……、とダウンロードした後しばらく放置状態だったのですが、いざ読み始めてみると、軽やかにページが進む、進む。
テンポがよくて、非常に読みやすい作品です。
一人称のこなれた文体がラノベっぽい雰囲気を醸し出していましたが、中身は本格的な小説でした。
作中で何度も行われる短距離の試合では、毎回主人公の想いや結果が描き分けられていて、引き出しの多さに感心。著者が陸上未経験者なのがびっくりです。
文庫版のおまけの「同窓会」によると、この作品は実際の陸上部を4年間取材して作り上げたものだそう。
選手の気持ちを文章で再現できる力量もさることながら、コミュニケーション能力の高さもすごいなと思いました。
ストーリーとしては、物語の終わらせ方が秀逸。
陸上の試合はもう少し先まで書けるはずなのに、クライマックスで切り上げる潔さが、まさに風のように清々しかったです。
ちなみに、妹に本の感想を話したら、アニメがよかったという話を延々とされました。
途中で何かおかしいぞ?と思ったら、妹が見たのは『風が強く吹いている』だと判明。
あちらは三浦しおんさんの書いた、大学駅伝の話ですね(笑)
タイトルが似ているうえにどちらも有名作品なので紛らわしいです。
凡人君の人生革命(Kindle Unlimited)
非常に真っ当な内容でしたが、僕にはちょっとハードルが高かったです。
ヒトデさんは、単に会社が肌に合わなかっただけで、リアルで人に積極的にアプローチできるタイプで、仕事をこなす体力もお持ち。
一方、僕はプライベートでは友人は全くおらず、病気持ちでフルタイムの会社勤めをしたくてもできないという有り様。
いやー、そもそもの前提が違いますね。
自分で書いてて悲しいですが、そういえば僕は凡人以下だったな、と改めて実感しました(泣)
というか、ヒトデさんは謙遜が過ぎる!
あんなに役に立ってかつ笑える文章を書ける人が「凡人」だなんてありえませんよね。
小さい頃から文章を書いてきた積み重ねがあるにせよ、「今日はヒトデ祭りだぞ!」を読むと、ヒトデさんはブログの天才だと感じます。
まあ、人をうらやんでもしょうがないので、僕も何かしら自分の人生に革命を起こせるように精進します。
カラスの親指(Kindle Unlimited)
読者を騙す仕掛けが緻密過ぎて、芸術の域に達していました。
ネタバレなるから詳しく書けないけど、とりあえず読んでほしいなあ……。
ラストにどんでん返しという作品はたくさんありますが、この小説では随所にいろいろな大きさの裏切りが仕込まれていて、作者の術中に嵌まる気持ちよさを何度も味わえました。
実は、僕は以前読んだ『向日葵の咲かない夏』が若干トラウマになっていて、『カラスの親指』もびくびくしながら読みました。
でも、今回は不気味な描写はなくセーフ!
道尾さんはホラー作家でもありますが、この作品は怖い話が苦手な人でも大丈夫です。
カンガルー日和
10ページ程度の短編(最後の「図書館奇譚」だけ長め)がたくさん収録された一冊。
村上春樹作品は長編にはなじめなかったけど、ショートショートサイズならいけるんじゃないかと思って読んでみました。
しかし、村上春樹はやっぱり村上春樹。
単純なエンタメ小説ではなく、かといって真面目な純文学とも違う。
テーマやページ数がバラバラでも変わらない、この強烈な「らしさ」は一体何なんでしょうね。
村上さんは比喩が見事で、堅苦しくない文体も嫌いではないのですが、小説の根底に流れる価値観(とくに男女関係)が、どうしても僕とは相容れないみたいです。
以前読んだ『職業としての小説家』は面白く読めたんだけどなあ……。
僕の中での村上さんは、森博嗣さんと同じく、「小説よりエッセイが好きな作家」の一人です。
関連記事:【2021年8月】今月読んだ本の感想まとめ。蒸し暑い夏は読書で乗り切る。
さて、個々の小説については一つずつ感想を書くには量が多すぎるので、とりあえず僕にとってのベスト3だけ発表しておきます。
第1位:スパゲティーの年に
第2位:駄目になった王国
第3位:4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて
果たして、僕と好みが一致する人はいるのかな?
アゴを引けば身体が変わる(Kindle Unlimited)
ここ数年で一番読んでよかった健康本。
今まで「背筋を伸ばす」と言われてもいまいちピンとこなかったのですが、この本の、
・あごを引く
・頭を前に出さない
といった説明でようやく自分の中で「いい姿勢」がどんな状態かがはっきりしました。
そうか、猫背ってこうやったら治るのか……。
実際、あごを引くと明らかに視野が広がり感動しています。
また、姿勢を意識し始めてから、おなかの調子が改善。便の切れがよくなったのか、すぐ翌日の朝から、お通じの際、トイレットペーパーに汚れが付かなくなったのには驚きました。
姿勢、大事ですね。
クローン病もこれで治ってくれるんじゃないかと、ちょっぴり期待しています。
世にも美しき数学者たちの日常(Kindle Unlimited)
数学にかかわる人々の思考や人生観が、直接取材を行った二宮さんの華麗な筆致で言語化されていました。
「数学者」のイメージ通り数学一辺倒な人もいれば、他の業界との融合を目指す人もいる。
新しい理論を生み出すことに喜びを見出す人もいれば、ただ理解したり、教えたりするのを楽しむ人もいる。
数学に対する向き合い方は人それぞれで、学問って自由だなと思いました。
興味深かったのは、「今の数学はつまらない」という高瀬先生の話。
厳密な数学の世界でも、論文に情緒が入り込む余地がある(あった)というのは意外でした。
そして、その「人の心」を数学に求める先生がいるのがまた面白いですね。
現代の数学を「冬景色」とまで言うとは……。
ちなみに、僕は理系で数学は得意な方ですが、大学に入ってから急にレベルが高くなって壁を感じました。
高校までのいわゆる「受験数学」は、今振り返るとものすごく優しく作られてますよね。
問題を解くための数学から、学問としての数学へ。
大人になった今、改めて入門し直すのも悪くないかもしれません。
アンテナの仕組み なぜ地デジは魚の骨形でBSは皿形なのか
途中から専門用語がバンバン飛び出して、ついていけなくなりました。
とくに第3章のダイポール・アンテナを作るところは、頭の中が「?」だらけ。
僕の理解力が足りないだけかもしれませんが、もうちょっと丁寧な説明が欲しいですね。
たぶんそれなりに電気工作をかじった人でないと、何をしてるのか意味不明なんじゃないかと思います。
もちろん学びはあって、アンテナの構造はたくさん写真が載っており、参考になりました。
ただ、肝心のアンテナの原理についてはモヤモヤが残ったまま。一筋縄ではいかなさそうなので、もっと優しそうな入門書を探します。(逆にがっつり専門書の方がわかりやすいかな?)
知ってるつもり: 無知の科学
人間が陥りがちな知識の錯覚について取り上げた本です。深く理解しているつもりだったのに、いざ説明しようとすると全然言葉が出てこない!というのはブログを書いているとよく起こる現象。
最近はネットで何でも検索できるようになったので、つい自分が賢くなったと勘違いしてしまいますね。
知識はコミュニティの中にあって、個人の持っている情報量はたいしたことないのが現実です。
自覚のない知ったかぶりが一番危険でかっこ悪い。知的な謙虚さを忘れずに生きましょう。
さいごに
毎月本の感想を書いていると、自分が同じような言い回しを多用していることに気づきます。
読んでる本の冊数の割には、ボキャブラリーが増えてない……。
「知ってる」言葉が「使える」言葉になるように、もっと文章を書きまくります。
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