『Klara and the Sun』に出てくる「sharp pencil」って何のこと?カズオ・イシグロさんの意図を考える。

カズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro)さんの『Klara and the Sun』では、登場人物がお絵描きをするときに「sharp pencil」という道具を使っていた。

これ、一体何なんだろう?


※以下は僕の個人的な考察です。作者の公式見解ではありませんのでご留意ください。


関連記事:【洋書】Kazuo Ishiguro著『Klara and the Sun』を読んだ感想。クララに教わる人間らしさ。


シャープペンシルは和製英語

一瞬、日本語でいうところの「シャープペンシル(シャーペン)」かと思ったが、シャープペンシルは和製英語。

英語では「mechanical pencil」が一般的だから、たぶん「sharp pencil」はシャープペンシルとは別物だ。

となると、直訳で「尖った鉛筆」か?

しかし、それなら形容詞の「sharp」は最初の1回だけでいい。作中ではすべての箇所にsharpが付いていたから、「sharp pencil」で一つの言葉だと思われる。


「sharp pencil」は未来の道具?

物語の中では、スマホやタブレットの進化系のような「oblong」という端末が出てくる。

それを踏まえると、「sharp pencil」も「oblong」のような未来の世界の道具なのではないか、というのが僕の結論だ。

作中では、AFのような人工知能はいるが、車の自動運転は実現しておらず、そこまで飛躍的に科学技術が発達しているとは考えにくい。

だから、「sharp pencil」は、ドラえもんの秘密道具のような魔法じみたものではなく、今よりちょっと便利機能が追加された近未来型の筆記具なのではないかと思う。

削らなくても尖った状態で書き続けられるとか、一本でいろんな色が出せるとか、いろいろと想像が膨らむ。


シャーペン説もなくはない

カズオ・イシグロさんの生まれは日本だから、和製英語と知ったうえで、あえてクララに「sharp pencil」と言わせている可能性はある。

つまり、シャーペンを見たとき、先入観のないロボットの視点からすると、ネイティブ英語の「mechanical pencil」より和製英語の「sharp pencil」の方が名前としてしっくりくるというわけだ。

クララが日本人的な言語感覚を持っていると考えると面白いが、いかがだろう?


作中にはお寿司屋さんだったり布団だったり、ちょくちょく日本由来の言葉が出てきた。

海外の有名作品に日本の気配を感じると、なんだかうれしくなってくる。


さいごに

「sharp pencil」が何を表しているのかは、日本語訳の『クララとお日さま』を読めばすぐに答えがわかるのかもしれない。

でも、それじゃあつまらない。

たとえ的外れだったとしても、作者の意図を自分なりに考察するのが、文学作品を読む醍醐味である。


関連記事:【比較】AmazonのAudible(オーディブル)とKindle Unlimitedはどっちがいい?それぞれのメリット・デメリットまとめ。

関連記事:
Kindleがあれば無料でたくさん洋書が読める!AmazonClassicsは英文多読にぴったり。