今井むつみ著『学びとは何か』を読んだ感想。知識は自分で見つけ出すもの。

今井さんの本は『英語独習法』も読んだ。そちらでも学びの本質がスキーマ(知識のシステム)の構築であることが繰り返し述べられていた。本書では間違った知識観(エピステモロジー)についてさらに深く掘り下げて考察されており、大変参考になった。

我が身を振り返ってみると、何をするにしても参考書や技法書を買い漁ってばかり。答えを外部に求めていた感は否めない。特にお絵描きに関しては、上辺の情報を集めるだけで実践が伴っておらず、自分の力で上達への糸口を見つけようとする姿勢が欠如していたように思う。「ドネルケバブ・モデル」とは言い得て妙で、ぐさりと胸に突き刺さった。

意外と難しいのは、物事の熟達には時間がかかるということをきちんと受け入れることだ。近ごろはSNSやYouTubeなどでたくさんのノウハウが流れており、自分だけが大事な「何か」を知らず遠回りしているような錯覚に陥る。そんなとき、長期の取り組みが必須条件だと心の底から確信していれば、一つ一つの課題に落ち着いて対処できるのだが、なかなかそううまくはいかない。つい焦って中途半端な状態で新たな近道を探してしまう。時間や効率を気にせず、上達までの長い道のりを楽しく踏破できる精神性が、一流の達人になるためには必要不可欠なのだと思う。

『英語独習法』と違って、本書では具体的な学習方法については述べられていない。それでも、「学びとは何か」という漠然とした問いに対する今井さんの誠実な回答は、僕の意識を揺さぶるには充分力強かった。