大胆不敵で刺激強めな重度障害者小説。市川沙央『ハンチバック』を読んだ感想。

芥川賞を授賞した、市川沙央さんの『ハンチバック』を読みました。

分量としては短くて読みやすかったですが、内容はなかなか刺激強めでした。


市川 沙央 (著)


家族で読むと気まずい

冒頭はまさかのHTMLタグで始まり、ブログを書いている身としては親しみがわきました。(pタグじゃなくてdivタグを使ってるのがまたいい)

しかし、中身はアダルト用語のオンパレード。端的に言えば「下ネタ」満載で、そういった方面に免疫のない僕は恐る恐る読みました。(中学生か!)

おそらくブログに書いたらGoogleから警告が飛んでくるレベル。

わからない言葉を調べたせいで、スマホの検索履歴がすごいことになってます。世の大人たちはこんなエロティックな単語を使っているのか……?


ちなみに、この本は僕が芥川賞授賞のニュースを見て「気になるなあ」と言っていたら、母が気を利かせて買ってきてくれました。

まさかこんなハードな性描写があるとは知らず……。

家族がひと通り読んだあとも、曖昧な感想に終始したことは言うまでもありません。


表現の自由を行使する力

ハンチバックには攻めまくったアダルト描写に加え、重度障害者に対して差別的に響く表現もあり、出版のハードルはかなり高かったと思います。そんな作品が芥川賞を取れる。日本における表現の自由もまだまだ死んでないなと感心しました。

ただ、たとえ素晴らしい作品でも、たとえ名誉ある賞を取っても、一部から批判を受けることは当然予想される展開。書いた作者も、本にした出版社も、賞に選んだ選考委員も、文学に携わる人たちはみんな勇者だと思います。

その一方で、世間やGoogleの顔色をうかがいながら文章を紡ぐ自分の小ささ。表現の自由があるのと、その自由を行使できるかは、また別の問題ですね。


市川さんは重度障害の当事者なので、主人公を自らと同一視して読まれる可能性もあるわけです。(実際、母は「どこまで実話かな?」と言ってました)

それなのに、淡々とした文章からは気負いも逡巡も全く感じられなくて、逆にこちら側が気圧されそうになりました。

胆力というか、覇力というか。対峙したらたぶん負けます。


さいごに

重度障害者の日常は普段の自分の生活からはかけ離れた世界。そう思って本を開くと、広がっていたのは、これまた僕とは縁遠いアダルトな世界。

ハンチバックは僕の人生とは重ならない2つ異世界で繰り広げられる小説でした。

こんなに大胆でかつ読みやすいアダルト系重度障害者作品はもう出てこないと思うので、この機会に読めてよかったです。


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