平野啓一郎『マチネの終わりに』を読んだ感想。

平野啓一郎さんの『マチネの終わりに』を読んだ。なんというか、すごく大人な恋愛小説だった。ここで言う「大人」というのは、単に年を取っているということではなく、教養と品格を兼ね備えているという意味。「これは修羅場になるぞ」という場面でも声を荒げることなく、終始気品に満ち溢れていた。詩とか音楽とかジャーナリズムとか、いろんな意味で僕は足を踏み入れることがない世界だなと思う。

平野さんの小説では、登場人物が自身の抱いた感情を、細やかな言葉で深く深く掘り下げていく。正直そんなに思慮深く生きている人なんていないと思うけど、普段自分の頭の中で流れている曖昧な思索がきれいに整頓されていくようで面白い。

この『マチネの終わりに』では、同じ章の中でも視点が度々切り替わっていて、三人称の良さが存分に生かされていた。最近の小説は三人称でもほぼ一視点の場合が多いので、これが本来の三人称だよなと思った。序文で語っている「私」が誰なのか気になるが、多分ただの演出なので深くは考えないでおこう。(もし「私」が著者で、蒔野と洋子に本当にモデルがいたら、あっちょんぶりけ)



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