【短歌日記】ゲーテでもすべてを言えたわけじゃない世界の隙間に僕もひと言

ゲーテでもすべてを言えたわけじゃない
世界の隙間に僕もひと言


鈴木結生さんの『ゲーテはすべてを言った』を読んだ。とても23歳の青年が書いたとは思えない。普通、若い著者の芥川賞受賞作にはある種の粗さのような瑞々しさがあるのに、この作品からは逆に長年文章を書き続けてきたかのような円熟味が伝わってきた。新聞の著者紹介では博覧強記などと書かれていたが、知識の積み重ねを存分に見せつけられる題材を選んできているところが大物だと思う。一体40代、50代になったらどんな話を書くのだろう。

物語自体も終始落ち着いていて、主人公に大きな感情の起伏がないのが芥川賞作品にしては珍しかった。ただ、義理の息子が教授でもある義父を主人公に描いた小説という設定なので、淡々とした描写はある意味当たり前。読んでいる途中はそんな設定忘れていたけれど、後から気づいてうまいやり方だなと思った。

ゲーテについては全く知識がないので、この小説の良さを十分に理解できていない気がする。だからといって改めて勉強しようという気概もない自分がなんだか悲しい。

年を取ると、未来の可能性より有限性が見えてくる。きっとゲーテもどこかの段階で「さすがにすべては言えないな」と悟ったに違いない。





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