Kindle Unlimitedで結城真一郎さんの『#真相をお話しします』を読みました。
いつか買ってしまうだろうと思っていたので、読み放題の対象になっていてラッキーです。
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感想・レビュー
知的遊戯を楽しむミステリ
全体を通して頭のいい人が書いた小説だなと思った。序盤で引きを作り、伏線を散らしながら話を進め、最後には意外な結末を持ってくる。文学的な深みはないが、すっきりと「答え」がわかる、知的遊戯のような小説だった。同じようなことは新川帆立さんの『令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法』を読んだ時にも感じた。ただ、新川さんの場合はこんこんと溢れ出るアイデアを頑張って組み立てているような印象を受けたが、結城さんはあらかじめ設定したテーマに合致する回答をそつなく文章化しているように感じた。
伏線はわかりやすく、怪しいと思ったところは大体伏線だった。違和感があればメモをしておいて、最後に伏線として回収されるか答え合わせをすると楽しいかもしれない。
意外さを感じない怖さ
本書の短編はどれも「意外さ」を売りにした話だが、真相を意外に感じるのは世間的な常識から逸脱しているからこそという部分が大きい。しかし、近ごろ世の中が物騒になってきて、「これくらいなら、まあ、あってもおかしくないか」と感じる話もあった。「現実は小説より奇なり」というが、単純に社会的な倫理観が壊れてきただけな気がする。特に5話目の『#拡散希望』は、実際に同じことをしている家庭がすでにありそうだと思った。YouTubeやTwitter(現X)は、発信する中身に関わらず、ただ「見れらる」だけでお金がもらえるのが怖い。プライベートをどれだけコンテンツとして切り売りできるかは人それぞれだが、承認欲求が満たされるのに加え収益まで発生するとなれば、ボーダーは緩くなる。炎上覚悟でやらかす人は迷惑だが、仕組みがそれを促している面もあると思う。ある程度は規制をかけて、いらない驚きは小説の中だけにとどめてくれるとありがたい。
2,3,4話目は男女関係の話。かつてSF小説で夢のように語られていたことが科学技術の進歩で現実になりつつあるが、倫理的な一線を超えるのにも技術が手を貸しているなと思った。マッチングアプリや精子提供など、恋愛感情をミステリに組み込む術が増えていくのは素直に喜べないところがある。
さいごに
この本には5つの短編が収録されていますが、どれもつながりのない別々のお話。映画では一体どうやってひとつの作品にまとめ上げたのか、とても気になります。
個々の話の落ちは知ってしまったので、配信で全体のストーリーだけ飛ばし飛ばし見たいですね。(こういう見方が許される世の中になったのもちょっと怖い)
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