【2026年4月】今月読んだ本の感想まとめ

【2026年4月】今月読んだ本の感想まとめ(感想・レビュー)


4月に読んだ本の感想を書いていきます。


読書記録(2026年4月)

スメラミシング


一応は神や信仰といったテーマで括れるものの、作品ごとの振り幅が大きすぎて一冊まとめての感想を書くのが難しい。というわけで、それぞれの短編ごとにコメントしていく。

■七十人の翻訳者たち

話の作り方がうますぎて、史実とフィクションの境目がどこにあるのかわからなかった。聖書は不思議な書物。最終的な「聖書」ができるまでに一体どれだけの人数が関わったのか、想像するだけで気が遠くなる。人々の思考の総体こそが神の啓示なのかもしれない。

■密林の殯

『ラストマイル』や『ブラックボックス』など、最近物流・配送関係の仕事を題材にした作品をよく見かける。ただ、既存作品が労働環境の過酷さをメインにしているのに対して、この短編では物を運ぶ行為そのものにスポットを当てていた。どんな物事にも神を見出すことは可能だが、僕は心の底からは何かを崇拝しきれない。

「八瀬童子」はフィクションなのかと思ったら本当に存在するらしい。天皇周りには一般人の知らない独特な風習がたくさんある。

■スメラミシング

表紙(予想通り装幀は川名潤)を見て表題作はSFだろうと思っていたら、コロナ禍のTwitterの話。今振り返ると良くも悪くも当時がTwitterのピークだったなと思う。まだインプレゾンビも生成AIも蔓延っておらず、生き生きとした人の感情が生み出したカオス。この短編に関しては朝井リョウの匂いがした。

■神についての方程式
 啓蒙の光が、すべての幻を祓う日まで

この2作品からはどことなくテッド・チャンの匂いがした。(特に『啓蒙の光が、すべての幻を祓う日まで 』)世界を再定義するような物語は、読んでいると今生きている現実は誰かの頭の中の空想のひとパターンなのではないかという気がしてくる。小説で思考実験できるSF作家たちは楽しそうでうらやましい。

■ちょっとした奇跡

ケン・リュウの『紙の動物園』の中に似たような雰囲気の作品があったと思う。確か、地球から脱出した宇宙船で、少年が命懸けで保守作業をする話。こういう作品の主人公は大抵は純粋な少年で、周りから止められても最後は自分ではなく全体の利益を考え行動する。今の社会も誰かの犠牲の上に成り立っているはずなのに、意識する機会はなかなかない。地球が危機に陥るタイプの小説で全体の人数が減ると、途端に犠牲者の姿が露になって戦慄する。

推しの殺人


地下アイドルの3人組が犯罪を隠し通すため頑張るお話。ミステリーというよりクライムノベルで、意外な犯人や巧妙なトリックに驚かされるような展開はなかった。正直なところ、もうひとつ小説として垢抜けていない印象。

新人賞なのでしょうがないが、『このミステリーがすごい』関連の本にはこのような「ああ、まだ原石だな」と思うタイプの作品がよくある。「やたらとカメラを長回しするような描き方で冗長」とか「差し迫る危機を乗り越えるときの緊張と緩和のパンチが弱い」とか、頭の中に浮かぶダメ出しに対して「じゃあ、お前が書いてみろよ!」とセルフツッコミを入れながら読んだ。(すみません、書けません。)主人公の背負っているものが重すぎるので、彼女にはちゃんと幸せになってほしい。

俺ではない炎上


これちゃんと納得のいく結末あるの?と思っていたら、予想の遥か上のきれいさで物語が畳まれていって、ぐうの音も出なかった。さすが浅倉さん、ここまでやるか。

主人公のちょっとズレた感じは実社会にもたくさんいそうな絶妙なラインで、100%同情しきれない濁りのある人間性が、タイトルの「俺ではない」にぴったりはまっている。最初は頑張って阿部寛のイメージから離れようとしたが逃げきれず、途中からは「もう阿部寛でいいよ!」と開き直って読んだ。小説は映像化するとどうしてもキャストの印象がこびりつくので、映画やドラマの宣伝はもう少しこっそりしてくれると助かる。

地球にちりばめられて


はっきりとは書かれていないが、おそらく消滅したのであろう日本に対するユーモアや、不意に挟み込まれる音韻を駆使した言葉遊びが心地よい。旅行にも人とのコミュニケーションにも興味はないのに、国や言語の壁を軽やかに越えて移動する登場人物たちを追っていると、自分も誰かとどこかへ出かけたくなった。文章全体を通して教養が光り輝いている。

オール・グリーンズ


主人公の女子高生たちがイカれ過ぎてて最高。純愛やスポ根だけが青春ではないとはいえ、ここまでぶっ飛んだ作品を書ける著者は一体どんな人生を歩んできたのだろう。最後の卒業式のシーンはここ最近読んだ小説の中でナンバーワンかもしれない。

トコトンやさしい宇宙ロケットの本


ついに有人での月の周回飛行が行われたので、ロケットについて知っておこうと思って読んだ。ロケットの仕組みや開発の歴史についてざっと把握するにはちょうどいい一冊。燃料の種類やジャイロの構造など専門的すぎて理解できないところもあったが、途中で離脱せずに最後まで読めた。第4版の改訂は2025年3月で、内容も比較的新しい。(一部情報が古いままの箇所はあった)

コラムに書かれていたJAXAの名前が決まるまでの流れは面白かった。組織が大きくなるといろんなところから注文がついて大変だが、なんだかんだでぴったりな名前に着地してるのには運命を感じる。

傘のさし方がわからない


いいことも悪いことも、暖かい言葉で前向きな思考に変換できるのは素晴らしい才能。自分や他人の感情の起伏を文章として魅せる技術が冴えわたっている。ポンポン繰り出されるたとえや比喩の手数の多さは読んでいて楽しかった。適切な改造を施せば車いすの人でも自力で乗り込んで車を運転できるという事実には驚いた。

ハイパーたいくつ

松田いりの (著)

小説が小説の形を保っていられるギリギリを攻めた文章。あまりの自由さに『オール・グリーンズ』のラストシーンの煙がここまで飛んできたのかと思った。読み進めるほどに滅茶苦茶になっていく感じは前に読んだ『レプリカたちの夜』に似ている。この手の作品を「不条理小説」と呼ぶのかもしれないが、最後の方は純粋に汚すぎて閉口。言語センスには拍手。

献灯使


言葉遊びのレベルが高すぎてクラクラした。設定やストーリーを説明するために言葉を使っているのではなく、言葉を紡ぐための足場として設定やストーリーを利用している感じ。韻というより思考の類似性を踏んでいる。想像力と語彙力の総合芸術。

一人称単数


一人称の「ぼく」、モラトリアム、洋楽、存在が曖昧な女性。いかにもな要素がてんこ盛りで、村上ワールドの風を一身に浴びた感じがした。夢と現実が溶け合うような作風は、長編だとついていけなくなるので、この本みたいな短編くらいが丁度いい。途中からは私小説的な文章になったが、雰囲気は変わらず。自分のことを語るときに、ここまで文学的な修辞が様になる人は珍しい。

村上春樹作品は恋愛観になじめずやや苦手なところがあるが、たまに読むとやっぱり文章はうまいなと思う。読みやすいのに文学性が損なわれていないのがすごい。僕も文章から文学へのハードルを優雅に飛び越えてみたい。


さいごに

月末に本の感想を振り返っていると、「えっ、これ読んだの今月!?」と驚くことが多々あります。

「過去」が「昔」へと走り去っていくスピードは年々速まっていく気がして恐ろしいですね。

本の内容は記憶に留めておけなくても、何かしら自分の糧になっていると信じたいです。