Hans Roslingさんの『Factfulness』を読みました。
この本は日本語訳もベストセラーになっていますが、Kindle版で比較すると洋書は値段が半額以下だったので、そちらを購入。
意外な事実が盛りだくさんで、文字通り「世界観」が変わりました。
あらすじ・概要
事実やデータに基づいた世界の見方、Factfulness(ファクトフルネス)について解説した本。ネガティブな情報にとらわれる、誰かに責任を押し付ける、小さな変化に気づかない、といった人間が陥りがちな10個の本能を取り上げ、その対策を述べています。
格差や貧困問題など、これまで国際社会に抱いていた印象が一変する内容です。
ちなみに、著者のHans RoslingさんはTEDトークでもプレゼンを披露しています。
英語のリスニングの練習にもなるので、ぜひ見てみてください。
感想・レビュー
世間の常識は偏見だらけ
この本では、冒頭に国際社会への理解度をチェックするための問題が13問載っていました。問題はすべて3択でしたが、僕が正解したのは13問中4問だけ。んー、難しい……
ただ、一般的な正解率は10%前後で、ランダムに答えた場合(33%)を大きく下回るんだとか。それはそれで驚きですね。
13問の問題の中で、僕がとくに意外だったのは2つ。
一つ目は、世界の平均寿命についての問い。僕は50歳だと答えましたが、正解はなんと70歳!
日本が平均80歳超えの長寿なのは特殊だと思っていましたが、世界的にも寿命はどんどん伸びているのです。
アジアやアフリカの貧困国を含めてこの数字だと考えると、びっくりですよね。
2つ目に驚いたのは、世界の人口分布。
現在、世界の人口は約70億人で、その分布比はだいたい
アメリカ(南北):1
ヨーロッパ :1
アフリカ :1
アジア :4
となるそうです。
中国の人口が多いのはともかく、ここまでアジアに偏っているとは……
この他の問題も予想を裏切る答えが連発で、自分の世界認識がいかに間違っているかを痛感しました。
13問の質問はネットで無料で見れるので、まだの人にはぜひ解いてみてほしいです。
参考:https://www.gapminder.org/test/2017/
収入でグループ分け
この本では、国際社会を客観的に捉えるため、世界を収入によってグループ分けして考えることをすすめていました。分け方は、1日当たりの収入に応じて次の4段階。
レベル1(0~2ドル)
レベル2(2~8ドル)
レベル3(8~32ドル)
レベル4(32ドル以上)
これ、一見単純なようですが、画期的な考え方です。
たとえば、一般的な「先進国」と「発展途上国」のような二極化した分類だと、具体的にどの国がどれくらいの経済レベルなのかわかりません。
収入に注目してグループ分けすることで、それぞれの国の生活状況を、より正確に想像することができるのです。
著者はこの区分けを基本として全体の話を進めているので、これを知っておくだけでも十分価値があると思います。
ちなみに、日本は当然レベル4ですが、世界の大部分の国々が属しているのは、レベル2,3の中間層。
ニュースを見ていると、つい貧しい国(レベル1)がたくさんあるような気がしてしまいますが、実は少数。世界は着実に進歩しているみたいです。
家族の思いが詰まった一冊
この『Factfulness』はHans Roslingさん一人で書かれたものではなく、息子のOlaさんとその妻Annaさんとの共著です。「あとがき(Outro)」には本ができるまでの経緯が記されていて、感動しました。
なんと、Hansさんはすでに亡くなっていて、この本は彼が死ぬ直前まで推敲を重ねた、集大成的作品だったのです。
本文中の文章はHansさんが語りかけるような書き方だったので、てっきりまだ元気なのだと思い込んでいました。
たしかに、TEDトークで見た感じ、かなりご高齢ではありましたが……
本の中では、国際問題について驚きの事実がいくつも述べられていましたが、最後が一番衝撃的でしたね。
冒頭の「Author’s Note」では、この本が自分1人ではなく、家族3人で協力して作り上げたものだと強調されていて、改めて読み返すと感慨深いです。
さいごに
『Factfulness』には、客観的なデータだけでなく、Hansさん自身の経験談も豊富で、踏んできた場数の多さに圧倒されました。それを冗談交じりに面白く語れるのがすごい……
英語でも読みやすく、また一つ賢くなれた気がします。