東野圭吾『マスカレード・ナイト』を読んだ感想。1作目を軽々と超えてきた。

東野圭吾『マスカレード・ナイト』を読んだ感想・レビュー。1作目を軽々と超えてきた。


東野圭吾さんの『マスカレード・ナイト』を読みました。

東野さんの小説は久しぶりでしたが、さすがの筆力。

500ページ以上あるのに、途中で飽きることなく楽しめました。


※以下の感想にはネタバレを含みます。

ホテルの仕事はどこまでリアル?

この本では、本筋の事件と並行して、ホテルのコンシェルジュである山岸尚美が、客からの無茶な要望にどう応えるかが見どころです。

今までのシリーズもそうでしたが、今回は特に難易度の高い課題ばかりでした。

まあ、ほとんど事件絡みの偽案件だったんですけど……。

実際にホテルのスタッフは日ごろこんな無理難題に対応しているのかな?

一流ホテルのコンシェルジュにどこまでの裁量があるのかは、非常に気になるところです。


僕も仕事でよくお客さんからわがままなお願いをされますが、「できません」の連発。

いかにトラブルを避けるかを最優先に立ち回っているので、ホテルで働いたら身がもたないと思います。


狂った時計で危機回避

とばっちりで殺されかけた山岸尚美が、狂った時計をつけていたおかげで助かったのは、なかなかうまい仕掛けでした。

序盤の何気ない雑談が伏線になっていて、そう来たか、という感じです。


ただ、犯人が襲った相手の腕時計を見てタイマーをセットするのは、かなり不自然。

あれだけ周到に計画を立てていたのに、最後の大事な場面で人の時計を使うでしょうか?

重箱の隅をつつくようですが、犯人の供述でもちゃんとした理由の説明がなく、個人的にはだいぶ違和感が残りました。


ちなみに、僕はいつも早めに行動できるように、腕時計の針はわざと3分ほど進めた状態にしています。

もし犯人に捕まったのが僕だったら、カウントダウンが始まる前に死んでた……(汗)


まさかの湊かなえ手法

この本では、事件が起こった後、関係者3人の供述が並べて書かれている箇所があります。

で、その部分の読み心地が、湊かなえさんの作品にそっくり!

同じ出来事でも微妙に証言が食い違っていたり、相手に語り掛けている口調だったりが、『Nのために』や『贖罪』を彷彿とさせて、背筋がゾクッとしました。

意識しているのかは不明ですが、東野さんは「湊かなえ手法」(勝手に命名)を完璧に使いこなしてますね。


とはいっても、『マスカレード・ナイト』の場合は結末が明快で、「イヤミス」とはかけ離れた爽やかな読後感。

やっぱりミステリーは謎が解けてすっきり終わるのが一番です。


さいごに

『マスカレード・ナイト』は、母も相当面白かったようで、1日であっという間に読み終えていました。

普段は「集中力がなくて2時間続けて映画が見れない」とか言ってるんですけどね。

また本屋さんに行って、母が喜んでくれるような傑作を探し出してきたいです。