青崎有吾さんの『ノッキンオン・ロックドドア』を読みました。
小気味よくサクサクと謎解きを楽しめる一冊でした。
感想・レビュー
どの事件もコンパクトにリズムよく解決まで進んでいき楽しく読めた。あまり文学的な深みは無いけれど、だからこそ謎解きそのものの面白さで真正面から勝負している感じがして好感が持てる。主役の探偵2人に特殊な能力がなく、純粋に推理力だけで答えに辿りついているのもかっこいい。ストーリーの展開は大まかに、事件発生→間違った推理・行き詰まり→ひらめきを得て解決！という流れ。登場人物たちを誘導していったん壁にぶつける手際はスマートで、ミステリーとしての様式美を感じた。盛り上がりの魅せ方もうまく、どうしても出てくる若干無茶なところも、「ここで驚いてほしい」「ここですっきりしてほしい」という作者の意図が明確に伝わってくるので安心して読めた。
各短編（最終話以外）の読後感は手塚治虫の『ブラック・ジャック』に似ていた。『ブラック・ジャック』を初めて読んだ時は、本来なら数ページかけて描写する「結」の部分が一コマで終わることが多くて驚いたが、青崎さんの短編も事件が解決したらサッと幕が引かれて潔い。一見簡単そうに見えるけれど、尻切れトンボに感じさせないためには一番おいしい「最後の1ピース」以外の説明をそれまでの話の流れの中ですべて済ませておく必要がある。あっさり読める短編ながら、ミステリー小説の技術が詰まった作品だと思った。
さいごに
正直なところ、読み終えて一番最初に頭に浮かんだ感想は「大事なところは引っ張るんかい！」です。それぞれの事件自体はしっかり解決するんですけどね。4人の過去に一体何が……。
いったんミステリー以外の本で箸休めしてから、次巻に挑もうと思います。
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