【50音エッセイ】第6回 「カレー」について

50音順にテーマを決めて、エッセイを書いていくコーナー。

第6回は「か」の「カレー」について。


「カレー」について

クローン病と診断されてから、カレーは一度も口にしていない。揚げ物やアイスであればたまになら大丈夫かなと思うが、たぶんカレーは即アウト。腸を通過しきるまで為す術なくもがき苦しむかもしれないと考えると、迂闊には食べられない。

ただ、10年以上味わっていなくても、カレーはいまだに好きである。

人生で一番おいしかったのは、小学校の給食のカレー。校内の給食室で作られるメニューはどれもレベルが高かったが、カレーのおいしさは特に印象に残っている。小学1年生でも食べられるように、辛さは控えめ。一口サイズで食べやすいのに、溶けることなく柔らかいジャガイモ。カレーに完全に馴染んだ肉とにんじん。いつもカレーとセットで出ていたほうれん草のソテーも、今振り返ると「野菜」に対する嫌悪感を一切抱かせないおいしさだった。(たまに登場する夏野菜のカレーは苦手だった。ナスってカレーにいる?)

レトルトのカレーに関しては、小学生のころはなぜか「カレー職人」一択だったが、 中学2年生あたりから「ふらんす亭」の「伝説のカレー ビーフと玉ネギ」と「銀座カリー(中辛)」の2つが好きになった。「ふらんす亭」の方は溶けた玉ねぎの奥深い甘味が美味。「銀座カリー」はしっかりと形の残った玉ねぎと牛肉が、はっきりした辛さのルーと相性抜群。どちらの場合もルーを無駄にしないよう、ご飯をたくさんおかわりして食べた記憶がある。最後に口にしてからずいぶん年月が経っているので、今はもう味が変わっているかもしれない。

家で母が作るカレーは毎回味にばらつきがあり、基本的にはおいしかったが、たまに辛すぎたり水分量が多過ぎたりしていた。具材はどれも大きめカットで、ジャガイモは1玉を半分に切っただけ。食べにくくはあるものの、レトルトでは味わえないホクホク食感だった。ルーは母親が気分で選び、2種類をブレンドしたりもしていたため、どうしたら「おふくろの味」を再現できるのかは完全に謎である。

今でも時折、無性にカレーが食べたくなるときがある。しかし、クローン病が完治する気配は全くないので、もし次にカレーを口にする機会があるとすれば、それはきっと死を覚悟したとき。