【2024年5月】今月読んだ本の感想まとめ。双葉文庫の創刊40周年記念しおりがかわいい。

【2024年5月】今月読んだ本の感想まとめ。双葉文庫の創刊40周年記念しおりがかわいい。


ブログの記事を作成するのは見た目以上に手間がかかって面倒なのですが、ずっと手を付けないでいると、たまに禁断症状のように何か書きたくて仕方なくなるときがあります。

というわけで、久しぶりに読書記録再開!

今月読んだ本の感想をまとめて書いていきます。


読書記録(2024年5月)

マチネの終わりに


たぶん僕が体験することは一生ないであろう、大人の恋愛を描いた小説。

主人公たちを引き裂く出来事は衝撃的で、その後の展開は他の恋愛作品ではなかなかないパターンだと思います。

蒔野と洋子が相手のことを慮る思考が精緻に言語化されており、著者である平野さんの文学的な考察の深さに圧倒されました。

関連記事:
平野啓一郎『マチネの終わりに』を読んだ感想。


紛争地域で働く洋子の描写を読んでいて思い出すのは、森絵都さんの『風に舞い上がるビニールシート』。

ああいう難民や戦争などの個人の努力では解決不可能な問題に取り組む人々の、仕事に対するどこか諦めをにじませたような、それでいて目を背けることを是としない真摯で達観した態度はみな雰囲気が似ていて、それが小説の中だけなのか、実際にそうだから作品に反映されているのか、僕にとっては遠い世界過ぎてよくわからないですね。

法廷遊戯


「俺のターン、ドロー!」の遊戯とはまったく関係なく、ロースクール(法科大学院)を舞台にした法律がテーマの小説です。

起きる事件がショッキングなのはもちろん、読み進めていくにつれて登場人物たちの真意が少しずつ明らかになっていく構成がうまく、最後まで引き付けられました。

清義も美鈴も馨もみんな頭いいし努力家なのに、境遇のせいで悲惨なことになっていてかわいそうすぎ。

主人公たち(とサク)が今後どんな人生を送るのか、とてもとても気になります。


個人的には墓荒らしで逮捕されたおじさん(権田さん)のエピソードが好きだったのですが、映画版では丸々カットされているらしく、Amazonプライムで映画を見た母とはその部分の話ができませんでした。

Kindle版で買ってしまったので、母に原作を読ませられないのが残念……。

映画には原作で登場するサクやトオルも出てこないようですが、それでも面白かったとのこと。脚本家や演出家ってすごいなと思いました。

クレヨンしんちゃんベストセレクション【初期逆傑作選】すべてはここからはじまった!編


双葉文庫から刊行された『クレヨンしんちゃん』の傑作選。内容は漫画ですが、通常の小説などと一緒に書店の文庫本コーナーに置かれていました。

いやー、くだらないギャクが満載で素直に笑えますね。

初期のしんちゃんは絵が今とはだいぶ違って、歴史を感じます。

クレヨンしんちゃんの漫画は僕が通っている床屋にたくさん置いてあるのですが、コロナ禍以降はそのお店が完全予約制になってしまい、待ち時間に読むということができなくなってしまいました。

今回は完全に衝動買いでしたが、久しぶりに懐かしのほのぼのギャグに触れられてうれしかったです。

巻末には「クレヨンしんちゃん誕生秘話」というおまけコーナーがあり、初耳の情報(僕にとって)がいろいろ載ってました。


ちなみに、今の時期に双葉文庫の本を買うと、創刊40周年を記念した栞が挟まっています。

クレヨンしんちゃんとたばぶー(双葉文庫公式キャラクターのぶたさん)の絵が描いてあって、とてもかわいい。

ハロー・ワールド


IT関連の「何でも屋」である文椎が主人公の連作短編。ウェブ広告やSNS、暗号資産といったなじみのある話題を扱いながら、国際的なネットと自由、貧困問題といった壮大なテーマが描かれていました。

5話目の『めぐみの雨が降る』では、ベーシックインカムを成り立たせる、ある種の解決策が示されていて、大変興味深かったです。

早く実装してくれないかな(笑)


どの話も郭瀬や主人公の技術力(というか仕事力)がすさまじ過ぎて、世のITエンジニアの給料が高いのは当然なのかもしれないなと思いました。

プログラミングにしても意思決定にしても、とにかくすべてが速い……。


4話目で取り上げられていた「マストドン」は、少し前にX(旧Twitter)からの乗り換え先として注目を集めたサービス。

まさかイーロン・マスクがTwitterを買収する前から、Twitterを見限ってマストドンへ移る話が書かれていたとは驚きです。


11文字の檻


2024年版の『このミステリーがすごい』でいろんな人が絶賛していて気になったので読みました。

表題作の『11文字の檻』は、評判通りすごい話。

ちゃんと11文字のパスワードが存在して、読者も勘がよければ答えにたどり着けないこともないというのが面白いですね。

もちろん僕は普通にびっくりしましたけど(笑)


表題作以外で好きだったのは『噤ヶ森の硝子屋敷』。

トリックはシンプルですが、無駄がなく一発で急所を仕留められた感じ。

これだけミステリーを読んでいても、まだこの「してやられた感」を味わえるんだな、としみじみ思いました。

つまらない住宅地のすべての家


とある住宅地に住む人々の生活が、女性横領犯の刑務所からの脱走をきっかけに揺り動かされていくお話。

路地の周りの家庭それぞれの住人の視点から状況が描かれ、章ごとに順番に語り手が変わっていきます。

本の冒頭には住宅地の見取り図と各家庭の住人の簡単な説明が載っており、とても助かりました。


序盤で住人たちが抱いていた鬱屈とした思いが、物語を通じて前向きに変化していく描写はお見事。

僕は「一軒家に住んでいる」というだけでどうしてもお金持ちをイメージしてしまうのですが、たとえ住む場所が確保されていても、人の悩みは尽きないものだなと思いました。


上述の『法廷遊戯』で出てきた「無辜」という言葉は、もう当分は出会わないだろうなと思っていたら、次に読んだこの本ですぐお目にかかりびっくり。(48ページ)

さらに、以前に洋書で読んで、「そんな児童書日本語でも知らないな」と思っていた『たのしい川べ』も登場。(250ページ)

自分がマイナーだと思っている言葉や作品でも、世間では広く知られてる場合があって面白いですね。


さいごに

最近ようやく、本屋さんに行くとき、マスクをつけずに店に入るようになりました。

コロナ禍前は当たり前だったはずなのに、なんだか緊張してしまうのは不思議ですね。

マスクを外すのに慣れた頃に、また別の病気が流行らないことを祈ります。


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