毎年のことではありますが、6月は雨が多くてうんざりします。
そんなどんよりした天気でも、とりあえず読書。
というわけで、今月も本の感想を書いていきます。
読書記録(2024年6月)
レプリカたちの夜
レプリカ工場とシロクマが出てくることくらいしかあらすじが説明できない、というかあらすじが存在するのかもわからない、とんでもなくカオスな小説。
話の展開がめちゃくちゃすぎて方向性が見えず、途中で迷子になりかけました。
それでも最後までたどり着けたのは、文章がこなれていてうまかったから。
カバーに「選考会を騒然とさせた新潮ミステリー大賞受賞作」とありますが、意味不明なのにするする読めて、僕としてもどう評価していいのかわかりません。
不条理小説の洗礼を真正面から受けた感じ。
一応紙の本で買ったけど、家族に読ませるかは迷うなあ……。
線は、僕を描く
事故で両親を失い空っぽになっていた主人公が、水墨画と出会うことで心を取り戻していく物語。
主人公が才能あり過ぎなのに、嫌な感じは全くせず。その他の登場人物も含め、みな水墨画に向き合う姿勢が真摯で好感が持てました。
いやー、これは好きですね。
小説としての表現の仕方が気に入り過ぎて、イメージを壊さないよう、映画や漫画の情報を見るのは極力避けるようにしています。
バッタを倒すぜ アフリカで
6年くらい前に寝たきり入院していた時に読んだ『バッタを倒しにアフリカへ』の続編。
前作の面白さは健在のまま、バッタに関する学術的な話もたくさん語られていました。
こんなに分厚い新書を読んだのは初めてですね。
明るい文章の合い間から時折のぞかせる真剣な表情からは、研究を頑張っても本が売れても一筋縄では認められない学問の世界の厳しさが伝わってきます。
個人的に面白かったのは、やっぱりティジャニの話。
お金に対する感覚が日本人とは違い過ぎて、世界は広いなと思いました。
前野さんは気前良すぎ!
乳と卵
川上未映子さんの作品は読んだことがなく、短そうだし芥川賞だしということで買ってみました。
これは、まあなんというか、なるほど……。
口語体レベルMAXみたいな文体で、考え抜いて書かれているはずなのに、まるで心の声をそのまま垂れ流したような生々しさ。
改行が少ないのは正直ちょっと読みづらいけど、この書き方でしか伝わらないものが確実にあると思いました。
メインの内容は女性の性や豊胸手術についてで、男としては当事者の気持ちを本質的に理解することは難しいなという感想。
とくに僕は子どもを作るという発想を捨てているので、自分の身体の中で生命の源がうごめいているみたいな気持ち悪さは感じません。
ただ、共感できない価値観や思考に触れるのもまた読書の醍醐味。
普段自分が意識すらしてない些細なことでも、生活を狂わせるくらい深刻に悩んでいる人がいることは忘れないようにしたいです。
空白を満たしなさい(上・下)
会社の屋上から転落死した主人公が、3年後に生き返り、自らの死の原因を探る物語。
死んだはずなのに生き返る系の作品は多数ありますが、本作では、主人公にドラマチックな使命がなかったり、他にも復活者がいて、生き返りが社会的にある種の現象として受け入れられていたり、現実と地続きに描かれている点が新鮮でした。
本書で登場する「分人」という考え方は、人格が「増える」のではなく、全体としては一人のまま、割合を変化させながら「分割される」というのが面白いところ。
平野さんの作品はどれも考察が深くて感心しますが、本作は特に気合が入っているなと思います。
作中では「幸せそうな人でも自殺してしまうのはなぜか」という問いに対する一つの答え(というより解釈)が示されていて、少なからずそういうパターンもありそうだなと感じます。
僕の場合は死を選ぶとしたら確実に持病関係なので、そんな複雑な精神状態とは無縁ですけどね(泣)
関連記事:この目で確かめるまでは死ねない!意地でも生き延びて見届けたいことまとめ。
さいごに
たくさん本を読んだりブログを書いたりしているときほど、仕事でスムーズに言葉が出てくるし、タイピングも速くなります。本の感想ブログは、意外と実用的に役立つ趣味なのかもしれませんね。
楽しいし暇つぶしにもなるし、お得お得(笑)
先月の読書記録はこちら
↓
【2024年5月】今月読んだ本の感想まとめ。双葉文庫の創刊40周年記念しおりがかわいい。
関連記事:本は読まずに聴く時代 !? Amazonのオーディオブックサービス、「Audible(オーディブル)」が面白い。