ようやく夏も終わり、と言いたいところですが、まだまだ秋本番といえる気温にはならず。
涼しい季節を待ち望みつつ、今月も本の感想を書いていきます。
※補足
タイトルに「Kindle Unlimited」とつけているのは、AmazonのKindle Unlimitedを利用して読んだ本です。Kindle Unlimitedの読み放題対象作品は変更される可能性があるので、ダウンロードの際はご注意ください。
読書記録(2024年9月)
7.5グラムの奇跡
眼科医院で働く視能訓練士を主人公にした小説。6月に読んだ『線は、僕を描く』と同じく、砥上裕將さんの作品です。
前作同様、ひねくれた人が誰も出てこず、登場人物はみな心根のよい人ばかり。全編一貫して爽やかで透き通った読み心地でした。「嫌な奴」がいなくても物語として成り立つのは、ある意味すごいですね。
視能訓練士の仕事は、そもそもそんな職業があることすら知らず、小さい子供からお年寄りまでコミュニケーションを取りながら検査を進めるのは大変だなと思いました。
僕も目の見え方がだいぶおかしい(メガネでは矯正できないらしい)ので、手遅れになる前に眼科に行こうかなあ……。
関連記事:【2024年6月】今月読んだ本の感想まとめ。本を読んで空白を満たしましょう。
紙の月
銀行のパート職員として働く主婦が、横領の深みにはまっていく物語。
横領の仕方やお金に対する価値観には時代を感じます。
令和版なら、詐取の手段がSNSだったり、お金を使いこむ先が推し活になったりしそう。
自分で自分を制御できないところなど、以前読んだ金原ひとみさんの『アンソーシャル ディスタンス』の一編として加えられてもおかしくない作品だと思いました。
ぎんなみ商店街の事件簿(Brother編、Sister編、Kindle Unlimited)
商店街で起こる3つの事件を2冊ぞれぞれで別視点から描いたミステリー。
ちょうどKindle Unlimitedで両方とも読み放題になっていたので、ありがたく読ませていただきました。
片側ではモヤっとしていたことがもう一方で解き明かされていたり、事件の別の側面が見えてきたりして、見事な構成。
矛盾なくどちらも落ちをつけるのは大変そうだけど、考えるのは楽しそうだなと思いました。
私たちが星座を盗んだ理由(Kindle Unlimited)
2話目の『妖精の学校』は、「この問題ってそんな風にいじっていいの!?」と感心。
確実に何のことかはわかるようにしておきながら、すべての描写には合理的な説明ができないような思い切った設定にしているのが好きでした。
その他の話は、正直僕にはあまり刺さらず。
どんでん返し系の作品はこれまでにもたくさん読んできたので、目が肥えてきてしまったかもしれません。悲しい……。
変な家
ガチのホラーだったら嫌だなと思って避けていたのですが、本屋さんで目にするたびに気になって買ってしまいました。
結果、そんなに怖くなかった(笑)
元々web記事なだけあって読みやすく、細かい謎の答えがすぐ明かされるテンポのよさもあって、世間的に流行るのもわかるなあ、と思いました。
個人的にはもうちょっと間取り図で遊んでほしかったですが、湿っぽくなく淡々と物語が展開していく書き方は好き。
とりあえずどんな話かわかってすっきりです。
数学する身体(Kindle Unlimited)
「数学する」とはどういうことかを、研ぎ澄まされた言葉で綴った一冊。
著者の岡潔へのリスペクトがすごくて、「心酔」ってきっとこういうことなんだろうな思いました。
自分との境がなくなるまで数学に浸るのは僕には無理そうですが、それぐらい身も心も捧げられるようなものが見つかると嬉しいです。
数学に直接関係ない部分でも、随所に挿入されるエピソードが面白く、序盤に出てきた進化的な電子回路設計の話は強く印象に残りました。
スモールワールズ
またとんでもない作家さんが出てきましたね。
どの短編も違った方向性の趣向が凝らされていて、底知れない筆力を感じました。
『魔王の帰還』の小気味よい漫才風の文章も、『花うた』の往復書簡でやり取りされる手紙文も、全部好き。
直木賞を取った『ツミデミック』は、文庫化したら絶対買います。
爆弾
都内に仕掛けられた爆弾を解除するため取り調べ室で容疑者と対峙するという、刑事ドラマの年末スペシャルでありそうな内容。
個人的には、もうちょっと登場人物のバックボーンを掘り下げてほしかったです(特にスズキ!)。
ただ、続編にあたる『法廷占拠』では本作のキャラ達が再登場するようなので、もしかしたらあえて伏せているのかも。
そうだとしたら、罪深いなあ……。
さいごに
ブログで文章を書くとき、「個人的には」と前置きをつける癖がどうしても抜けません。とくに本の感想なんてそもそもが主観の塊なので、個人的なのは当たり前なんですけどね。
ネガティブなコメントをするとき、言葉の攻撃力を和らげるもっとスマートなやり方がないか模索しています。
※先月読んだ本の感想はこちら。
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【2024年8月】今月読んだ本の感想まとめ。作者も登場人物も才能ある人多すぎる。
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