外出自粛が緩和されて、徐々に町に人が増えてきた6月。
本屋さんも営業を再開して、僕はとても喜んでいます。
やっぱり、本は実物が並んでいるを眺めるのが一番ですよね。
戻りつつある日常にホッとしつつ、今月も本の感想を書いていきます。
※補足
タイトルの後ろに「Kindle Unlimited」と付けているのは、AmazonのKindle Unlimitedで読んだ本です。読み放題の対象は定期的に変更されるので、ダウンロードする場合は価格の表示にご注意ください。
【Kindle Unlimited公式サイトはこちら】
先月の感想:【2020年5月】今月読んだ本の感想まとめ。人生に答えはないとしみじみ思う。
読書記録(2020年6月)
Viruses: A Very Short Introduction
「A Very Short Introduction」シリーズはコンパクトに見えて情報量が多いので、真面目に理解しようとすると疲れますね。
とくにこの「Viruses」は、医学的な専門用語連発できつかったです。
英語の勉強もかねて、と背伸びして洋書を読む必要はなかったかも。病気の名前の英単語には無駄に詳しくなれました(笑)
話の中心は、ウイルス学の歴史や、いろいろなウイルスの特徴、引き起こす症状、治療法、過去に起こったパンデミックの流行から終息までの経緯など。
入門書にしてはかなり突っ込んだところまで書かれています。
また、出版年が2018年なのにも関わらず、「Introduction」では新型コロナについて触れられています。
本編では解説されていないので、そこだけ差し替えたみたい。粋なことをするなあ、と感心しました。
夜は短し歩けよ乙女(Kindle Unlimited)
角川文庫はちょくちょくフェアをやっているので、Kindleを使っている人は要チェック。
3月ごろに読んだ『ペンギン・ハイウェイ』も、当時はKindle Unlimitedの対象でした。
関連記事:【2020年3月】今月読んだ本の感想まとめ。無職じゃなくなったけど読書記録は続けます。
森見さんは、人物に合わせて口調を変えるのが上手。
この小説は男女二人の視点が入れ替わりながら話が進む形式で、しゃべり方にそれぞれ血が通っていました。
言葉で遊んでいる箇所がたくさんあって、作者が楽しんで文章を書いているのが伝わってきます。
ちなみに、作中で出てくる「おともだちパンチ」は、病院で採血を受けるときの手の握り方と一緒。
僕は持病の検査で月に一度通院していて、なじみ深い動作です。
「親指を中に入れてグーっと握ってください」という看護士さんの声が頭に響く……。
半分生きて、半分死んでいる(Kindle Unlimited)
雑誌の連載をもとにした本だそうですが、本人は執筆に乗り気ではなかったご様子。
冒頭でそれを堂々と書いて許されるところがすごいですね。
養老さんは、エッセイの中で「人間の作ったものに興味はない」と何度も述べていて、現代社会に対するあきらめに近い批判が随所に散りばめられていました。
人間は自分たちの作ったシステムに気を取られ過ぎていて、自然環境など生身の「もの」をないがしろにし過ぎだ、との指摘には、僕も共感。
「言葉で世界は動かない」というのも、寂しい気はするけど、たしかにその通りです。
いくら言葉を並べても、物質としての世界は何も変わりませんからね。
言葉を過大評価せず、単なる道具として扱っているからこそ、養老さんの文章は自然体で読みやすいのかもしれません。
いくら言葉を並べても、物質としての世界は何も変わりませんからね。
言葉を過大評価せず、単なる道具として扱っているからこそ、養老さんの文章は自然体で読みやすいのかもしれません。
あなたの人生の物語
僕はSFはあんまり詳しくないですが、表題作の「あなたの人生の物語(Story of Your Life)」は文句なく傑作。
未知の言語を解読していく過程があまりにも精巧に描かれているために、起こりえないはずの結末が、現実と地続きのように感じられました。
この作者、めっちゃ頭いい……。
他の短編も、科学に対する知見の広さと洞察の深さが、物語の世界観を確かなものにしています。
個人的に面白かったのは、「顔の美醜について‐ドキュメンタリー(Liking What You See : A Documentary)」での、見た目の美しさをめぐる議論。
ワクワクするような話ではないけれど、「カリー(美醜失認処置)」という架空の技術を題材にして著者が繰り広げる思考実験にはうならされました。
僕だったら、カリーを受けるか迷うなあ……。
自分の気持ちに素直な女の子の最後の決断が、殺伐とした論戦の読後感を爽やかにコーティングしています。
おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密(Kindle Unlimited)
お金を手に入れる方法を、
・かせぐ
・もらう
・ぬすむ
・かりる
・ふやす
という風に分類しながら働くことの意義を考えていくストーリーで、社会や仕事に対する新たな視点を与えてくれる内容でした。
難病患者の僕としては、「フツーなめんな、フツー最高」と言ってもらえて、なんだか救われた気分ですね。
リーマンショックやピケティの理論についても噛み砕いて説明されていて、とても分かりやすかったです。
ちなみに、上記の5つ以外のお金の入手方法は何か?というのがクラブの最終課題。
なんと、僕があてずっぽうで「これかな」と思っていた答えは見事正解でした(笑)
まあ、当たっていたのは言葉だけで、本質的な意味合いは全然違いましたけど。
6番目に何がくるのか、みなさんも予想してみてください。
徹底図解 パソコンのしくみ
期待以上に写真がたくさん載っていて大満足。
「パソコンのしくみ」と言いつつ、ルーターやペンタブ、地デジチューナーの構造まで解説されていて、逆にやり過ぎなくらいです。
いろんな機器の内部ビジュアルがわかって、眺めているだけでも楽しい一冊でした。
池上彰の世界の見方 中国・香港・台湾(Kindle Unlimited)
謎めいた中国の政治体制や、香港、台湾との関係性がやっと腑に落ちました。
社会主義なのか資本主義なのか判然としない中国の経済システムも、歴史の流れを追っていくと、すんなり理解できますね。
池上さんの本はほぼ毎月読んでいますが、世界のお国事情を語らせたら、彼の右に出る人はいないと思います。
中国についてブログに書くのはちょっぴり怖いので、感想はこの辺で。
さいごに
Kindleの容量を空けようとライブラリーを整理していたら、ダウンロードしたまま手を付けていない本が何冊もありました。デジタルで積読すると目に見えなくて、つい忘れてしまいますね。
過去の自分からの贈り物だと思って、ちょっとずつ消化していきます。
※追記(2020.7.31)
7月分の感想も書きました。
↓
【2020年7月】今月読んだ本の感想まとめ。森博嗣さんの読書論にブログを書く手が一瞬止まる。
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