【2021年2月】今月読んだ本の感想まとめ。どんな分野にも良質な解説書が存在するのはありがたい。

【2021年2月】今月読んだ本の感想まとめ。どんな分野にも良質な解説書が存在するのはありがたい。


ふと気がつくと、2021年もあっという間に2か月間が経過してしまいました。

まだ年が替わった実感も薄いのに……。まさに「光陰矢の如し」ですね。

時の流れの速さに驚きつつ、今月も本の感想を書いていきます。


※補足
タイトルに「Kindle Unlimited」と付けているのは、AmazonのKindle Unlimitedを利用して読んだ本です。



読書記録(2021年2月)

逆ソクラテス

小学生が主人公の短編が5つ収録されています。

以前新聞に伊坂さんのインタビューが載っていて、この本ではいつもの「毒」を封印したと語っていました。

その言葉通り、今回は拷問や殺人などの目を背けたくなるようなグロいシーンは無し。明るく前向きな読後感でした。

学校が舞台ということもあってか、倫理的、道徳的な「正しさ」を問う言葉が多かったです。


個人的に一番よかったのは、2話目の「スロウではない」。

ちょっと方向性は違うけど、なんとなく『SKET DANCE』のヒメコとモモカを思い浮かべてしまいました。

「転校してきて、やり直そうとしているんだったら、やり直させてやりたくないか」という先生の穏やかな声が胸に響きます。

出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記

出版翻訳家として活躍した著者が、売れっ子になったのち、業界から足を洗うまでの記録です。

「職業的な死」を迎えた理由が予想以上にハードで唖然としました。

こんなの読んだら、怖くて出版翻訳家なんて目指せないよ……。


宮崎さんみたいに英語スキルと仕事力を兼ね備えた人が、本筋とは関係ない部分で心をくじかれるのはやりきれないですね。

労働環境さえ適正なら絶対天職なのに、もったいない。

トラウマを克服するのは難しいのかもしれませんが、夢を叶えるまでの一途な姿勢を読むと、ぜひまた翻訳の仕事に復帰して、ヒット作を飛ばしてほしいなと思います。

面白いとは何か? 面白く生きるには?(Kindle Unlimited)

作家の森博嗣さんが「面白い」という概念についてさまざまな角度から論じた本。

「はじめに」に書かれている通り、抽象的な内容ばかりでしたが、世の中の潮流やそれに対する違和感がうまく言葉にされていて唸りました。

どんなテーマでもお金を払う価値のある文章を生み出せる、森さんの執筆能力はお見事です。


他人に見せることを前提としない「発散しないアウトプット」が一番面白いとの主張には納得。

僕も自己完結で楽しめるような趣味を探して、心の癒しにしたいです。

昨年読んだ『読書の価値』と同様、生き方の再考を迫られる一冊でした。



いちばんやさしい5Gの教本(Kindle Unlimited)

近ごろ着々と導入が進みつつある「5G」についての解説書です。

最新技術だけでなく、移動通信システムの基本的な仕組みも丁寧に説明されていて、非常に勉強になりました。

僕は今まで「高速」と「低遅延」の区別が判然としなかったのですが、この本を読むと、それぞれがどのような場面で要求されるのかなど、両者の違いがはっきり分かります。

MTCとかURLLCとか、これから5Gで社会がどう変わっていくのか楽しみですね。


ちなみに、この本ではアルファベットを用いた略称が大量に登場し、意味を確認するためにページを行きつ戻りつするのが大変でした。

巻末に用語集はあるけど、電子書籍だとページ移動がきつい……。

僕はKindle Unlimitedの読み放題を利用して読みましたが、もし購入するのであれば、絶対にKindle版より紙の本で買うことをおすすめします。

夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業

某テレビ番組の添削指導でおなじみの夏井先生が、超初心者向けに書いた俳句の入門書です。

いつも思い付きで適当に俳句を作っていたので、一度正しいやり方を確認しようと思い買ってみました。

結果、読んで大正解!

俳句の基本的なルールや発想法、できあがった作品の良し悪しの判断基準など、知らなかったことがたくさんあって、僕の中の「俳句観」がガラッと変わりました。

本屋さんで見たときは「さすがにやさし過ぎるかな?」と心配したけど、全然そんなことなかったですね(笑)


また、本書では夏井先生とKさん(俳句ど素人の編集者)との会話形式で話が進むのですが、そこに書かれている2人の顔のイラストがとてもかわいかったです。

表情が生き生きしていて、絵を眺めているだけでほっこり。

イラストレーターさん、いい仕事してる!

The Wind in the Willows(洋書、Kindle Unlimited)

モグラやネズミ、カエル、アナグマなどの動物たちが自然の中で繰り広げる出来事を描いた物語。

ドアのついた家で生活していたり、車やボートに乗ったりと、動物たちがみな人間っぽい生活を送っているのが愉快でした。

作中でキャラクターは「Mole」や「Water Rat」、「Toad」などと一般名詞で書かれていますが、僕の頭の中で日本語に訳すときは全員「くん」付けで呼んでいました。

和訳は『たのしい川べ 』というタイトルで、岩波少年文庫版で出ています。(僕は読んでません)


思わずもらい泣きしそうになったのが、モグラくんが動物の本能によって、自分のかつての住処に気づく場面。

はっきり戻りたいとは言い出せないモグラくんと、それを気遣うネズミくんとのやり取りに胸がジーンとしました。

「優しい」という点では共通でも、その方向性が異なる2人の人柄(人じゃないけど)がよく表れていて、とても好きなシーンです。


すぐ調子に乗る不遜なカエルくんには最初はイライラしたけれど、刑務所からの逃走劇はテンポよく楽しく読めました。

むかつくキャラでも段々愛着が湧いてくるのは小説の魔力ですね。

何度痛い目に遭ってもめげないカエルくんの姿勢は、僕も見習うべきかもしれません。


この『The Wind in the Willows』は、僕が読んだKindle版の発売日は2016年となっていますが、元の小説が発表されたのは1908年で、100年以上も前。

かなり昔の作品のため、使われている英語も古く、児童書にしては文章が読みにくかったです。

時代とともに変化していくのは英語も日本語も同じなんだなと実感しました。



思考中毒になる!

たくさんの著書を出している齋藤孝さんが、常に頭を働かせずにはいられない「思考中毒」になるためのヒントをまとめた本。

どちらかというと、方法論よりも「いかに思考が重要か」を示すことに重点が置かれていました。


文章から伝わってきたのは、斎藤さんがガチガチの文系人間だということ。

人を理系・文系で分類するのはあまりよくないかもしれませんが、斎藤さんはとても極端。

効率化のため九九を半分しか覚えていないという話は衝撃的で、世の中いろんなタイプの人がいるんだなあと思いました。

さすがに九九は全部暗記した方が、後々楽だと思いますけど……。


意識しようと思ったのは、序盤で語られていた「思考」と「考えごと」の区別。

僕は悩んでばかりで考えが同じところをぐるぐる回ってしまうパターンがしょっちゅうあるので、紙に思考の経過を書き出すなどして、ちゃんと状況が前に進んでいるのか確かめる習慣をつけたいです。

すごい実験(Kindle Unlimited)

物理学の最先端である「素粒子」の実験について解説した一冊。

著者が高校で行った授業を元にした本で、講義の様子をそのまま文章にしたような書き方でした。

雰囲気としては、池上彰さんの「世界の見方」シリーズに近いですね。




加速器の原理は大学で習ったのですが、実際にどう動くのかはいまいち具体的にイメージできませんでした。

この本では、装置の各部分の仕組みが写真やイラスト付きで説明されていて、ようやく理論が現実世界に降りてきた感覚。

「本当に人の手で作ってるんだなあ……」と、今さらながら恐れ入りました。


さいごに

今月はスマホの使用を控えたおかげで、読書の時間をたくさん確保できました。

やっぱりツイッターやネットニュースを眺めるのに比べて、本を読んだ方が圧倒的に充実感がありますね。

手元に1台だけ残すなら、スマホより絶対Kindleです。

※追記
3月分の感想も書きました。
 ↓